映画「カラスの親指」
道尾秀介のベストセラー小説を阿部寛を主演に豪華キャストで伊藤匡史が映画化。
あらすじ&キャスト
訳ありで詐欺師となった元サラリーマンと年上の弟分。そんな2人は成り行きで姉妹と出会い、姉の彼氏も含めて5人で奇妙な共同生活を始めます。
ヤクザからの嫌がらせが始まりこのまま黙って殺されるのはゴメンだと作戦を練って反撃にでるが共同生活には裏がった!!
どんでん返しをお楽しみに!!
ネタバレ感想/カラスの親指
詐欺師
訳ありで詐欺師となった元サラリーマンの竹沢竹夫(タケ)は競馬場で素人のフリをしてウロウロしていると入川鉄己(テツ)から話しかけられます。
テツに勧められた通り馬券を購入すると見事に当たりました。
「換金所で金を受け取ったらコーチ料寄越せって言われるよ、古い詐欺だよ」
客に話しかけられたタケは「別に当たってるから仕方ない」と伝えると「そんな事言ってたらどんどん責め寄ってくるよ、仕方ないな、一割でいいから馬券買ってあげるよ」と言われます。
有難い話だがタケは「いくらか分からないけど社長から頼まれた当たり馬券を換金しに来たんだ」と伝え馬券を見せます。
万馬券だと気付いた客は420万だったが「社長の分42万も買ってあげるよ」と言いタケは有難く受け取ります。
客はシメシメと思い換金所に行くが馬券を機械に入れても読み取れませんと出てきてしまいます。2枚重なっている事に気付いたときにはタケは年上で弟子のテツと共に競馬場を後にしていました。
タケとテツは「豚々亭」でラーメンを食っていると「堅気には見えない人がタケさんの事いろいろ聞いてきた」と店長から聞かされます。
消防車が通り過ぎサイレンの音が近いなと思いながら帰宅すると自分の家が燃えていました。タケはヒグチの仕業で放火だと気付き「逃げるぞ」とテツに言いました。
消せない過去
タケは会社の同僚の保証人となってしまい借金を抱えていました。
妻を病気で亡くし娘がまだ幼かったのでまずは借金を返済するのが先決だと思いヤミ金のヒグチに言われたとおり仕事を手伝っていました。
返済能力のない家庭でもなんとか生きていこうと蓄えがあるもの、その大事な金を追い込んで出させるのが仕事でした。タケは脅す事はしなかったが何度も何度も足を運ぶと相手は観念して金を出すのです。
ある日、母子家庭の母親がまだ幼い姉妹を残し自殺してしまいました。
なんとも思っていないヒグチに頭にきたタケはヤミ金の証拠となる書類を盗み警察に届けました。ヤミ金は破滅し安堵するタケだったが家が放火され娘が殺されてしまいました。
それからタケは名前もすべて捨てて逃げ詐欺師となり残された姉妹に金を送り続けていました。
タケは弟子にしたテツに初めて過去を話しました。
テツがいい場所を見つけ荒川近くに新しい部屋を決めるが一軒家で月10万なのでタケは驚きます。
金をだいぶ使ってしまったタケは建設会社相手に3000万の詐欺をした記事を見て「俺たちもこんなでかい詐欺ができたらな」と頭を悩ませます。
奇妙な同居生活
アメ横で安い骨董品を買いテツが質屋に預けに行きます。しばらく時間が経ってからタケが店を訪ね「まだ無名だが収集家の中ではどんどん値打ちが上がっている物です。50万で買いますのですぐに連絡ください」と偽物の名刺を渡しました。
こうしてテツは600円の安物を15万で売る事に成功します。その帰りテツがセカンドバックを持つヤクザ風の男を見付けると金持っていそうだと感じたタケは尾行する事を決めます。
ソフトクリームを手にする女性が男にぶつかり、背広を拭きながら財布を掏るのを目撃したタケは「やるな、見事な腕だ」と感心します。
しかし気付かれた女性は逃げ遅れ捕まらないために財布を放り投げました。
「そっちは任せますよ」とテツが女性を助けに行ったのでタケは仕方なく男を妨害して逃がしました。
タケは娘が生きていたら同じ年頃だと思い「大丈夫か」と声をかけるが名前が「河合まひろ(妹)」だと分かり金を送り続けている姉妹の妹だったので驚きます。
テツが「両親は何してるの?」と聞くと妹は「お父さんは小さい頃にいなくなりお母さんは自殺した」と言いました。
家賃がたまって家を追い出されると知ったタケは「追い出されたら家においで」と住所を教えるが内心「なんで金を送っているのに金がないんだ」と不思議に思います。
翌朝、家を追い出された妹はやひろ(姉)と姉の恋人である石屋貫太郎をつれてやってきました。
やひろ、まひろの姉妹ならともかくなんで貫太郎まで来るんだとテツは怒るがタケは仕方ないと受け入れました。
こうして奇妙な同居生活が始まりました。
組織の嫌がらせ
姉は酒が好きなだけで甘ったれた感じだったが妹は掏りの腕前がある割には料理も上手で主婦業は完璧でした。
しばらく家の周りを彷徨かれ監視されてた気がしたから気持ち悪かったと姉妹が話し始め、男の特徴を聞いたタケはヒグチだと思い「この家に来るまで尾行されていないだろうな」と確認します。
そんな時、物音に気付いたテツが確認しに行くと子猫が入り込んできてしまいます。妹がすごく気に入ってしまったので名前を「トサカ」と名付け飼うことにしました。
姉妹と貫太郎はトサカを気に入り首輪を買いに行きます。テツは姉妹が持つバッグの中に大金が入っているのを見付けタケに報告します。
タケは自分が送り続けていた封筒の束や、姉妹の父親・光輝の置き手紙を目にし「あの金は俺が送り続けていたものだ」とテツに教えました。
だから家に招いたのだとテツは納得します。
ある日、最初は気のせいかと思っていたが知らない車が家の前に止まり監視されている事にタケは気付きます。心配して起きていると卓球をやっていた姉と貫太郎が「なんか明るくないですか」と言いました。
タケは放火されている事に気付き急いで皆で消火活動して鎮火させました。
家の前に車が止まっており「竹沢さん、ここにいたんですが、大変ですね」と言い走り去りました。
タケは自分が狙われている理由を話すと「8年前なら母親を殺した奴かも」と妹は言いました。
「タケさんと姉妹は同じ組織に恨みがあると言うことですか」と貫太郎がまとめます。
タケは日が昇る前に抜け出して新しい住まいを探そうと伝えるがトサカの姿が見えないので全員で探します。
消火活動の時に逃げてしまったのではないかと思い妹が玄関でずっと待っているのでタケは付き合います。すると何か放り込まれる音がしてタケが確認しに行くとそこには袋に入れられたトサカの死体が入っていました。
詐欺計画
タケは「逃げた方がいい」と訴えるが「なんで我慢し続ける人生なのか」と姉妹が泣き始めます。
刑務所から出てきたヒグチの組織が大きくなれば嫌がらせは今以上に酷くなるとテツは言うと貫太郎が偽物の銃を出し「これで仕返ししましょう」と言いました。
仕返しをする事を決めた5人はまずは怪しい車の持ち主を探ることにします。
家を留守にして貫太郎が遠くから様子をうかがっていると車から降りてきた3人のヤクザは家を鉄バッドなので破壊し始めました。車が走り去り連絡を受けたタケとテツはタクシーで尾行を開始しビルの一室がアジトだと突き止めます。
姉妹は「敵から貰った金だから」と高級ホテルを予約し5人はそこで作戦を考えます。
タケは足がつかないプリペイド携帯を大量に買いに行き、テツが敵のアジトの斜め下の部屋を契約します。そしてプリペイド携帯業者のチラシを作り姉妹がポストに入れに行きます。
貫太郎は時計の修理屋をやっていた経験から細かい作業が得意でありラジオを仕込んだ特殊な探知機を作りました。
さっそく「携帯電話を9台買う」と敵から電話があり盗聴器を仕込んで送ると振り込め詐欺をしているのをしっかり耳にします。
会話を録音し口座番号を皆でメモっていきます。アジトを仕切っているのはノガミという名前だと分かりヒグチの部下なんだろうとタケは思います。
実行
ヤミ金金融対策委員会を名乗り「警視庁指導のもと口座凍結の準備をしているが個人的に資料の消去が可能なため100万円で構いませんので口座データーの抹消をさせては戴けませんでしょうか」とファックスを送ります。
タケ達は予想通り金を金庫の中に隠す事を盗聴器を通して確認します。
タケ、テツ、妹、貫太郎の4人が業者を装い「盗聴器の電波を探してパトロールしている者です。不自然な電波を傍受しまして下の階から確認してきて結果、この部屋から最も強い電波を確認しました」と敵のアジトを訪ねます。
アジトにはノガミの他4人が何やら電話をかけおり、タケ達は貫太郎が作った探知機で盗聴器を探すふりをします。
若い女性がこんな特殊な仕事しているわけないと妹は疑われるが「社長の娘なんです」と誤魔化します。
作戦通り妹が「携帯に仕掛けられている」と発見し、テツが「小林(もちろん偽名)、頼む」と貫太郎に任せるが緊張からか顔から大量の汗をかいていました。
なんとか携帯を取り外し盗聴器をノガミに見せたあと、「この盗聴器では数十メートルしか届かないので中継器がどこかに仕込まれているはずです」と伝えます。
そしてタケが出番だと大きな探知機を取り出し隣の部屋まで行き金庫の中に仕掛けられている事を説明します。
「ヒグチさんしか金庫開けられない」
テツは「連絡して聞いてください」とお願いするがそこにヒグチが現れました。
説明を聞いたヒグチに「帽子を取れ」と言われたタケは恐怖心を抱えながらも帽子を取りました。付け髭にスキンヘッドにしていただけだがなんとか誤魔化すことができ、ヒグチは「業者さん、取りかかれ」と金庫を開けました。
金庫を紙袋に入れたのを確認するといきなり貫太郎が「金を出せ」と銃を取り出しました。
汗をかいて動揺しているのを見てヒグチは「ただの空気銃だろ」と言うが貫太郎が引き金を引くとものすごい銃声と共に壁に掛けてあった時計が破裂しました。
妹がノガミから金が入った紙袋を手渡され逃げ出すと貫太郎は「金を寄越せ」と追いかけます。
外から銃声が聞こえタケとテツは飛び出すと貫太郎が「僕じゃない、彼女が勝手に転落したんだ」と走り去ります。
タケは「救急車を呼んだ」と伝えるとヒグチは「警察が来たらやっかいだからさっさと金を取り返して戻ってこい」と命じました。
タケとテツは転落した妹を運ぶが実はこれは姉の方で最初から倒れて待っていました。妹の方は借りた部屋で変装して堂々とビルから脱出しホテルに戻りました。
解散
ホテルに無事に全員戻るとタケは火薬を仕掛けた場所を背にして拳銃を取り出した貫太郎に「何やってんだ、危なかっただろ」と責めます。
しかし貫太郎に「なぜ予定になかったのに合図出したんだろうと不思議に思っていました」と言われ、首の後ろを触るのが合図だったが自分が汗を拭くために合図してしまったのだと気付き「済んだことは仕方ない」と話を流しました。
紙袋も最初から偽札が入った物とすり替えており皆で祝杯を挙げます。
手に入れた金を5等分すると姉妹は「ずっと送られてきた金も使わないからこれも5等分しよう、その方がスッキリする」と言いました。
そして妹は「また3人で頑張ってみる」と言い、タケに頼って生きてきたテツも「この機会にタケさんの元を離れてみようと思う」と言いました。
急に寂しく感じるタケだがみんなの想いを受け入れあらためて皆の成功を祈って乾杯しました。
名残惜しく3人を見送るタケだが妹が振り向いて「気持ちは伝わったから、もうお金送らなくていいからね」と言い去って行きました。
最初から知られていたんだとタケは驚くと「自分とタケさんの話を聞いちゃったらしいです」とテツから教えられます。
テツとも握手して別れたタケは西の方へ歩き出し新しい住居を決めます。
結末/カラスの親指
ある日、姉妹と貫太郎から手紙が送られてきて名古屋で仕事を見付けてうまくやっている事を知るがそっくりなトサカが急に現れたと書かれていました。
「まったく出来過ぎだな」とタバコをふかすタケは今までの詐欺を振り返り「すべてが出来過ぎだ」と不思議に思います。
そして携帯業者のチラシを作った印刷屋に電話し「最初に原稿を持って行った人覚えています」と訪ねると「何度も利用して貰ってるから覚えている。携帯の前は宝石のチラシでした」と言いました。
鍵に悪戯されて入れないときにポストに入ってたチラシを見て電話をかけやってきたのがテツでした。その時に詐欺だと見抜き責め立てると「弟子にしてください」と頼まれたのです。
また妹は宝石屋のチラシを見て金持っていそうな男から掏りを働いたと話していました。
その事を思い出したタケは「豚々亭」に電話をかけ火事があった日のことを聞くと煙だけで悪戯だったと知ります。
火事で追い出されて、妹は宝石のチラシにそそられて掏りしに来た。テツに誘導されて出会わされたのか・・・と思うタケだが男がいなければ無理だと気付きます。
タケは豚々亭に詐欺師の話のポスターが貼ってあった事を思い出し店を訪ね確認すると妹が掏りをした男もノガミ達もみんな劇団員の人だと分かります。
「最後の報酬を受け取るときに病院に来いと言われたので入院しているかも知れない」と聞かされたタケは病院に行き「入川鉄己という男が入院していないか」訪ねるがいませんでした。
帰ろうとするタケだがテツが言葉遊びが好きだったことを思いだし「まさか」と思います。
「いるかわてつみ→かわいみつてる」だと解き姉妹の父親だったのだと気付きます。
河合光輝の病室に向かうと本を読んでいたテツは驚きます。
タケは前に「建設会社から3000万詐欺した」週刊誌を読んでいました。あの犯人はテツでありその金で劇団員を買収していたが建設会社社長はヒグチでした。
16年前に詐欺師だと妻にばれ許してくれない事で1人で生きてきたテツは半年前に余命1年を宣告され家族は今どうしているのか気になり調べました。
妻を借金地獄にさせたヒグチに仕返しした後、姉妹がすべてを許して本当の意味で再出発するにはタケの人柄を知ってもらう必要があったため引き合わせようと思ったのです。また出所したヒグチが仕返しに来るかも知れないと予想しタケに立ち向かう勇気を持って欲しいのも目的の一つでした。
「姉妹の再出発、タケに立ち向かう勇気、ヒグチへの復讐」、一石三鳥の作戦だったのです。
最後にテツは「詐欺師なんてろくな死に方しませんよ、今ならまだ間に合います」とタケに言いました。
今まで2人でやっていた詐欺はすべてテツが自分のお金を使っており誰からも奪ってはいませんでした。競馬場では本当の当たり馬券を下に使っており質屋の金はただのテツのポケットマネーでした。またトサカの死体もただのヌイグルミと鶏肉をまぜたものです。
タケは「3人ともうまくやっているみたいだから作戦は成功だな」と伝え足を洗うことを決意します。 続編、カエルの小指