作品情報/ラストナイト(薬丸岳)
刑務所を出たり入ったり繰り返す片桐は左手が義手で顔には豹柄の刺青がいれられている。
菊池が営む居酒屋に出所したばかりの片桐が現われる。最初に片桐が刑務所に入ったのは居酒屋での傷害事件だったが店と自分の妻を守ってくれたのが原因なので菊池は招き入れます。
片桐はなぜ悪さを繰り返し刑務所に入るのか、
それは深く胸に秘めた思いがあり、ある人物を探し復讐するためだった。
ネタバレあらすじ/ラストナイト
菊池正広は美津代と結婚し飲食店「菊屋」をオープンした35年前、客として来た片桐達夫と仲良くなりました。
娘の奈津子が生まれた頃に片桐はホステスの陽子と結婚して彼にも娘ひかりが誕生しました。
みんなが幸せだった32年前、
「菊屋」にいた片桐は美津代に難癖をつけた暴力団の男をカウンターにあった包丁で刺してしまい逮捕されました。
初犯であり相手にも原因があったので刑務所に入ることはなかったが仕事は首になり陽子と離婚しました。
それから片桐は悪い連中とつるむようになり32年間の間に刑務所を出たり入ったりするが久しぶりに店に来た時、顔面に豹柄の刺青が彫られていました。
5年前の事件で片桐の弁護人を務めた中村尚が「菊屋」を訪れます。
片桐が事務所に来て「また何かあったら先生にお願いする」と手土産を置いて帰っていったのでまた犯罪を犯すのかと心配になったのです。
中村は片桐の元妻である陽子の実家を訪ねると陽子はすでに亡くなったとひかりから知らされます。
娘と会えば片桐も変われると思いお願いするとひかりは承諾してくれました。
ひかりは物心ついた時にはすでに母親はいませんでした。
母親の兄に育てられた彼女は高校生の時に実父は犯罪者だと告げられました。
その時にひかりが赤ん坊の時に飛び降り自殺をして植物状態となった陽子が病院にいると知りお見舞いに行くが18歳の時に陽子は亡くなりました。
片桐を憎みながら生きてきたひかりはお腹の中に赤ちゃんができるが実父が犯罪者なんて受け入れてくれるはずないと悩みます。
そんな時に弁護士の中村が訪ねてきたので自分の思いを吐き出せずに父親を失いたくないと思い会う決心をしたのです。
陽子のお墓に案内したひかりは今までの不満や怒りをぶつけたが「俺はおまえを捨てた」とあっさり言われ、この男は赤の他人だと思います。
自分は絶対に子供を捨てたりしないと決心し「檻の中で孤独に死ね、それが報いだ」と言い放ちました。
結末/ラストナイト
片桐達夫は何故罪を犯すのか?
32年前に片桐に刺された暴力団の梶原史朗は復讐として陽子に覚醒剤を無理矢理射ち強姦を繰り返しました。
陽子は幻覚を見るようになりこのままでは”ひかり”を殺してしまうと思い守るために飛び降り自殺したのです。
片桐は陽子の仇をとるために情報を得たくて犯罪を繰り返していたのです。
顔面刺青は刑務所で会った時に顔がばれないようにするためです。
しかし、同じ刑務所に収監されるのは難しい事でした。
片桐は身体障害者の受刑者となれば軽い犯罪でも同じ刑務所になる可能性があると考え自らの手を事故に見せかけ切断しました。
片桐は受刑者達から梶原の妻・森口絢子が客引きをしていると情報を得ます。
絢子に太い客をつかんでいるから覚醒剤を手に入れて欲しいとお願いしついに片桐は梶原と会う事になります。
また片桐は「菊屋」の最近の常連でもあり、罪を変わりに被ってあげた荒木誠二が自分を尾行している事に気付いていたが目撃者が必要だと考え気付かないフリをします。
荒木は子供の治療費のために強盗をし片桐が罪を被ってくれたおかげで子供の死に目に会う事ができ心から感謝していました。
荒木は自分なりに恩を返せればと思い復讐を土壇場で止めようと尾行していたのです。
片桐は復讐を果たすため殺す計画を立てていたがひかりの最後の言葉で考えが変わったのです。
「陽子のように刑務所の外では死なせない」
片桐は梶原に銃で撃たれ写真を見て微笑むように口元を緩め息を引き取りました。
目撃者となった荒木は片桐が大事に持っていた写真をひかりに渡しました。
それは「菊屋」で片桐と陽子が幸せそうに赤ん坊のひかりを抱いている32年前の写真でした。