作品情報/悪意
東野圭吾による加賀シリーズ4作目。
人気作家が殺害され第一発見者が逮捕される。
加賀恭一郎(刑事)は状況証拠から犯人なのは間違いないがゴーストライダーだったのではと疑います。
やがて容疑を認めゴーストライダーになった理由、殺害動機の告発文が出されるが加賀は動機について何か違うと思います。
ネタバレあらすじ/悪意(東野圭吾)
事件・容疑者
人気作家でもある日高邦彦が殺された。
第一発見者は中学時代からの同級生、野々口修と被害者の妻・理恵。
この事件の担当となったのが加賀恭一郎だが野々口は教師だった時の先輩にあたります。 野々口は教師を辞め小説家になっていました。
野々口は日高の家にいたが藤尾美弥子が訪れたため帰宅し編集者と打ち合わせをしていると相談があるから来て欲しいと日高に言われました。
留守だったためホテルに泊まっている理恵に連絡し2人で部屋に入ったところ死体を発見したのです。
藤尾美弥子は日高と野々口の同級生で娼婦に刺し殺された藤尾正哉の妹でした。
日高が執筆した「禁猟地」という作品のモデルは正哉であり中学時代の行ないが書かれていたので彼女は本作品の回収と書き直しを求めていたのです。
●犯人は窓から侵入
●凶器は部屋にあった文鎮なので衝動的による犯行
●死亡推定時刻を気にする野々口が犯人だと加賀は疑う
野々口は日高の家のパソコンを使い時刻を設定して自分の家に編集者がいる時に連絡するよう設定していました。
また日高家に入る時に理恵を呼んだのもすべてアリバイの証人に仕立てるためです。
日高が仕事をしていたように見せかけた「氷の扉」の原稿は野々口が書いたものなのです。
逮捕された野々口は動機について口を閉ざす
野々口の部屋で発見された大学ノートには日高がこれまで発表した作品と内容が一致するものが書かれていました。
野々口は日高のゴーストライター?しかし癌を患う野々口は修行のために作品を書き写したんだと言います。
動機
7年前の旅行申込書や5年前に亡くなった日高の最初の妻・初美の写真が発見されます。
野々口は初美が亡くなった事故は「単なる事故ではないと」言っていた事が分かります。
また日高の家にあったナイフには野々口の指紋が検出され、「夜光虫」の本に隠されていたビデオテープには野々口が侵入する姿が映っており「夜光虫」は主人公が妻と愛人に殺される内容であるため、野々口が初美と不倫関係であり邪魔になった日高をナイフで殺そうとしたが失敗に終わったのではと加賀は推理しました。
告白文
作家になりたいと思い書き終えた「丸い炎」を読んで欲しいと日高を訪ねたが才能ないと言われてしまいます。この時、日高の妻、初美に一目惚れして後に不倫関係となる。
不倫関係に気付き始めた日高が邪魔になり殺そうと決意するが彼は計画に気付いていて失敗に終わります。
日高の新作「燃えない炎」は「丸い炎」を長編に書き直したものだと気付くがナイフとビデオテープを隠し持っているので盗んだとは言えませんでした。
自分の責任だと思った初美は自殺してしまうが日高は彼女を題材とした小説を書き始めたので変わりとなる小説を書き始めた事がゴーストライターになったきっかけです。
最後という約束で「氷の扉」を書き上げたが解放されなかったので殺したのです。
藤尾美弥子は「禁猟地」の小説に出てくる浜岡は日高自身だと思っていたので野々口がゴーストライターだと聞いて驚きます。
小説の中で悪さする仁志和哉の最大の犠牲者が浜岡であり小説を書く事によって復讐したのだと解釈していたのです。
生命にかかわるほどの暴力を受けていた浜岡だったが仁志の転校によって逃れていました。仁志は仲間に女子中学生を取り押さえさせ暴行しカメラで撮っていた事で捕まり施設に送られていました。
疑問
親友である日高が虐めにあっていた事を小説にするだろうか?妻を奪うだろうか?
加賀は2人の過去を調べます。
●野々口の母親は子供に対してかなりの過保護だった。
●登校拒否をした時は日高が迎えに来てくれていたが「お節介な奴」と思っていた。
●野々口は藤尾から虐めを受けていたが短い時間で終わり虐める側についていた。
●日高も虐めに遭っていたが根性で耐えていた。その虐めには野々口も加わっていた。
●藤尾が強姦事件を起こした時の写真を真相を調べていた日高が手に入れていた。
「燃えない炎」は、子供の頃に見に行っていた花火師の事が書かれていたが彼は中学時代の日高を覚えていた事でゴーストライダーは嘘だと分かる。つまり野々口の告白文はすべてが嘘となる。
ビデオテープは自分で撮影したものでありナイフは何の証拠にもならない、不倫関係などなく初美は事故死。
結末/悪意
長い時間と手間をかけて動機を作り衝動的な犯行だと思わせるために文鎮で殴り電話コードで首を絞めたのだ。
日高のパソコンデータから藤尾が女子中学生を暴行する写真が見付かり確認すると押さえつけていたのは野々口でした。
藤尾美弥子が裁判で日高と争う事になるかも知れないと思った野々口は暴行を手助けした事、虐めを受けたり虐めに加わった事を隠したかったのです。
日高は自分の事を虐めていた野々口との関係を復活させ「禁猟地」の作品には野々口であろう人物は登場していない。野々口の告白文により残酷な人間だと陥れられた日高は誰にでも優しかった少年の頃と今でも変わらないのです。
野々口の真の動機は日高の人間性を貶めることだったのです。
加賀は教師だった頃、教え子が卒業してすぐに自分を虐めていた生徒を刺した事件がありました。虐めていた理由は「なんとなく気に食わないから」でした。
野々口にも理解不能な深い悪意があったのだろうと思うのです。