東野圭吾「マスカレード・ナイト」ネタバレ感想/犯人と密告者は誰だ

 

作品情報/マスカレード・ナイト

東野圭吾さん原作、累計発行部数445万部突破した「マスカレードシリーズ」で第三弾!!

1958年生まれ。85年に「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年に「秘密」で第52回日本推理作家協会賞、2006年に「容疑者Xの献身」で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年に「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で第7回中央公論文芸賞、13年に『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年に「祈りの幕が下りる時」で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著では「沈黙のパレード」「希望の糸」「クスノキの番人」などがあり、ゲレンデを舞台とした「恋のゴンドラ」「雪煙チェイス」などの雪山シリーズも代表作の一つ。

 

木村拓哉、長澤まさみの共演で「マスカレード・ホテル」が大ヒットを記録して話題になったので続編映画化するかもしれません。

前作「マスカレード・ホテル」のネタバレはこちら

追記・製作決定が2020年11月18日に発表されました。公開は2021年9月17日予定のこと。楽しみですね。前作に続き木村拓哉と長澤まさみの共演で監督も同じく鈴木雅之が務める。木村拓哉さんはアルゼンチンタンゴの練習に一苦労したみたいですね。その他、中村アン、田中みな実、石黒賢、沢村一樹、勝村政信、木村佳乃、凰稀かなめ、麻生久美子、高岡早紀、博多華丸など)

 

マスカレード・ナイト=妊婦の女性が殺害された不可解な事件が起こると警視庁に「ホテル・コルテシア東京カウントダウンパーティー会場に犯人が現われる」と密告状が届く。再びホテルで潜入捜査が開始される事になり帰国子女の新田刑事はフロント係からコンシェルジュに出世していた山岸尚美と再会する事になる。「マスカレード・ホテル」では新田と尚美が同じ現場に立っていたこともあり「コンビ」だったが今回は尚美はコンシェルジュ、新田はフロントで氏原から指導されるのでそこまで接点はない。仮面を剥がす警察側と客の仮面を守るホテル側が協力し犯人を突き止める。素顔を隠したパーティー参加者500人の中から犯人を見つけだせ!!

 

 

ネタバレあらすじ/マスカレードナイト

東野圭吾「マスカレード・ナイト」

 

密告状

年越しが迫るホテル・コルテシア東京

コンシェルジュとなっていた山岸尚美は助けて欲しいと連絡があり駆け付けると要望通りの部屋ではないと客が怒っていました。

人物の写真が飾っていない部屋を提供したが窓を開けるとビルに巨大ポスターが飾られていたのです。「無理です」は禁句だと教えている尚美は許可を得てビルの屋上に300個の風船を浮かべて見えなくしました。

総支配人の藤木に呼ばれ訪ねるとそこには忘れもしない警視庁捜査一課の稲垣警部がいたので嫌な予感を抱きます。

 

ダンス教室に通っていた刑事・新田浩介は本宮上司から電話があり警視庁に出勤すると、眠らされたあと二本に裂いた電気コードで感電死させられた娼婦の和泉春菜が匿名通報ダイヤルにより練馬のマンションで発見された事を知ります。

捜査をしていた矢口チームには所轄にいた頃にコンビを組んでいた能勢がいました。被害者宅に出入りする複数の男性が目撃されており身元を突き止めようとした矢先一通の密告状が届きました。

「和泉春菜を殺害した犯人は12月31日、ホテル・コルテシア東京カウントダウンパーティー会場に現れます」

密告状と一緒に男女の隠し撮り写真があったが被害者と一緒に写っている男性の方にはモザイクが入っていました。また被害者はボーイッシュな服装だったのにクローゼットには少女趣味の服がかけられていました。

新田は二度とゴメンだと思っていたホテルに潜入捜査するのだと把握します

 

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コンシェルジュ

新田はフロントを任されるが指導係のホテルマン氏原からは信頼されずフロントには立たせてもらえませんでした。

コンシェルジュの尚美は40代のお客様・日下部からレストランを貸し切りにしてレッドカーペットを敷いて108本のバラ(花言葉で結婚してください)を並べたいとお願いされます。

2人が食事する時には誰もいないよう時間をずらしてみようと試みるが日下部の恋人である妙子から仕事を辞めたくないしアメリカにも行きたくないから恥をかかせることなく断る方法を教えて欲しいとお願いされてしまいます。

再会した新田から「人の心を動かすのは誠意」とヒントをもらいレッドカーペットにそって「門出」を意味するスイートピーを並べました。プロポーズされた妙子は「残念だけど歩む道は薔薇ではない。新たな門出の日にしたい」と告げると日下部は納得しました。

 

尚美はプロポーズに失敗した日下部から見かけた仲根緑を気に入ったから話がしたいと頼まれます。近くにいた新田は仲根緑と聞いて調べていた客だと思い出します。

仲根緑は「仲根伸一郎」の名で2名でスイートを予約しており名字が一致しているので問題はないがクレジットカードの方には名前の方が一致している「牧村緑」となっていたのです。

男性が出入りした様子はないので2人でいるように見せかけているかも知れないと新田は一応上司に報告していたのです。

尚美は部屋の窓から見えるビルに特別映像を投影さえディナーにフラワーアレンジメントとシャンパンをサービスします。涙を流す緑からケーキの写真を見せられ本物ではなく模型を作って欲しいと頼まれます。

新田は「仲根伸一郎」を調べていた捜査官から今年病気で亡くなっていることを知らされます。

尚美は模型ケーキを持っていくと緑は出来映えに満足し伸一郎は結婚する予定だった人でコルテシア東京のマスカレード・ナイトで誕生日を祝う予定だったので宿泊したのだと説明してくれました。

尚美は実は今までのサービスは「御夫妻」に会いたがっている人のサプライズだった事を伝えると緑は日下部とディナーを楽しみました。

 

被害者・捜査

密告者と通報者は同じ人物なのだろうか。お腹の子の父親は誰だったのか。

被害者・和泉春菜の母親は老舗店の跡取りで離婚しているため父親とは一緒に住んでいませんでした。春菜の中学からの親友の話では母親の交際相手の事が嫌いだと話し始めてから急にボーイッシュになったそうです。

新田はイタズラでもされたのだろうかと頭をよぎります。

 

春菜と同じように眠らされたあと感電死させられクローゼットの中に少女趣味の服が吊されていた未解決事件がありました。被害者の名前は室瀬亜美で野上という交際相手がいたが彼女が何処に住んでいるのかさえ分かりませんでした。

新田は名札が付いていないキャリーバッグを持った群馬県在住の浦辺に目を付けていました。届いた宅配便の住所が東京になっていたからです。

捜査員から連絡があり春菜が働いていたペットサロンの防犯カメラに浦辺が映っていました。野上と同じように家を知らなかったのではないかと思い上司や能勢と部屋を訪ねると彼は練馬区在住の既婚者・内山幹夫であり春菜との男女の関係があった事をバラされたくなければ従えと脅されホテルにやってきたことを知ります。

宅配便の中にはカウントダウンパーティー用のチケットとコスプレ衣装、鍵付きのバッグ、そして部屋で11時までには準備して待機するようメモが入っていました。

 

「春菜の事件の犯人はカウントダウンパーティーに仮装して現われるから絶対に捕まえて欲しい。刑事が待機しているならドアの前に立つ仮面人形が持つワイングラスに華を入れておいてください」

再び匿名ダイヤルに密告があり尚美は華をワイングラスに入れるが日下部とプロポーズ相手の妙子が一緒にいる連絡を受け妙だと思い調べると妙子の名刺がデタラメだと知ります。

一方、新田は常連だという曽野昌明が家族連れでやってきたので「いつもありがとうございます。」と口にしようとするが氏原に突っ突かれます。

曽野はいつも愛人であろう貝塚由里と利用していたからです。しかし、新田が次に目撃したときには曽野の妻・万智子と息子の英太、そして愛人の由里も一緒にいました。

 

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プロフェッショナル

カウントダウン・パーティーが始まり、新田は指示に従っている内山幹夫を尾行していると車にイタズラされたと連絡を受け曽野が1人でチェックアウトした事を無線で知ります。

内山は指示されたとおり宅配便で届いたバッグをプライダルコーナーに置いて会場入りしました。

尚美はカップルから写真を撮るだけだからチャペルを使わせて欲しいと頼まれ、何か手はないかと思いながら暗闇の中スイッチがあるところまで進むがいきなり背後から強い衝撃を受け気付くと口にはガムテープを貼られ手足を縛られていました。

尚美は自分の他に同じように犠牲となっている人物(曽野の愛人・貝塚由里)がいるのに気付きます。おそらく犯人の狙いは由里でたまたま自分はその場に来てしまったのだと気付きます。

仮面を付けた犯人は尚美の腕時計を見て「カウントダウン」を口にし尚美と由里の体に電気コードを貼り付けタイマーをセットし出て行きました。

 

ミイラ男がプライダルコーナーに入っていきバッグを持って出てきたと無線に入ります。警察はホテルから出て行かないように固めるがミイラ男は自分の部屋に入りバックを置いてパーティー会場に入っていきました。

バッグを持ち去ったと言うことは密告者側の人間だと分かるが内山やミイラ男は会場に留まり内山への指示もない。これでは動きようがないと思う新田だが操られているとしたらと考えミイラ男が動いている間の正反対の場所に駆け付けるとバッグを持つ仮面を付けた従業員とすれ違います。

新田は足を止め様子を探るとトイレに入っていき出てきたときにはマイケル・ジャクソンに扮していました。鞄には従業員の服が入っている事は予想できる。

新田は「踊りませんか」と声を掛けるとマイケルはバッグを置いて手を広げました。アルゼンチン・タンゴを踊っているとカウントダウンが始まりゼロになると一斉に全員が仮面やマスクを外しシャンパンが抜かれました。

新田はマイケルの被り物を掴んで引き上げます。

「不思議ですね。素顔だと分からないが仮面を付けて目と口だけ見ているとあの化粧が浮かんでくるんです。仲根緑の顔がね」

すると「新田刑事、おまえたちの負けだ」と中性的な声で緑は言いました。

仮面を付けた従業員はプライダルコーナーから出てきたと無線が入り駆け付けると尚美と由里が倒れており急いで電気コードを剥ぎ取りタイマーを止めました。

実は尚美が身に付けてる腕時計は祖母の形見で古いこともあり4分遅れていたのです。

時計が正確な時代だが、そのせいで余裕を持とうとする人が減り待ち合わせに遅刻する人が増えました。尚美は余裕を持つため敢えてこの時計を使っていたのです。新田はプロフェッショナルな人だと称えます。

 

正体

曽野英太は父親の超望遠のカメラを持ち出し遠くにある建物などを覗いているうちにカーテンが開いている部屋から見える若い女性を気にするようになりました。

何回か男が出入りするようになり通学途中に近くまで行くとちょうど車から2人が降りてきました。車の中を覗くと医療法人の封筒が入っていたがそれ以上は分かりませんでした。

しばらく経ち、女性が横たわっていて何日も動かないのを気にしていると母親の万智子に気付かれてしまいました。万智子は盗撮していたなんて言えないので匿名ダイヤルを使って通報するよう英太に指示したのです。

 

万智子は英太の話を聞いて医療法人を調べると英太が撮った写真から犯人は森沢光留院長だと知りました。

万智子は高校の時からの友達・由里に犯人の身元を掴んでいると伝えたあと金銭を要求するから共犯者にならないかと誘いました。

御曹司という事もあり一億を要求しダメなら警察に通報すればいいのです。

森沢は一億払うが正体を教えるのが条件だと言いました。由里が3年前に経験したホテル・コルテシアの「マスカレード・ナイト」を利用しようと言い出したので万智子は乗りました。

森沢が一億のバッグを隠して会場入りし万智子と対面します。そして在処を聞いた由里が確認してバッグをしまい会場に戻り互いに身分証を見せて取引完了というわけです。

ただ、2人の計画は警察に犯人が現われると密告し一億を手に入れた由里が警察に通報し万智子が逃げるというものでした。

しかし・・・・

夫がホテル・コルテシアで毎週月曜日に浮気している事を知っていた万智子は彼女からホテルの名前が飛び出したので偶然と思いながらも夫の携帯を探り相手が由里だと知るのです。

夫と友人に裏切られ頭にきた万智子は森沢に自分は共犯者だと名乗り金はいらないし証拠となる写真もすべて渡すから由里を始末するよう話を持ち込んだのです。

森沢は春菜の携帯から既婚者の内山と男女の関係にあると分かり警察の目を向けさせるのに使えると思い承諾したのです。

 

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結末/マスカレード・ナイト

新田は森沢の携帯を調べ2年前のやりとりがすべて残っていたので特別な存在相手なのだろうと思い笠木美緒を訪ねました。

男性恐怖症の美緒は女装していた森沢(当時は牧村緑と名乗っていた)と講演会で出会ったそうです。森沢は性同一障害だがその言葉を嫌っており双方を超越えした存在だと言っていました。

森沢は双子の妹に勧められ化粧をして女装し「姉妹ごっこ」で遊びながら仲良く育っていたが妹がレ○○されたショックで21歳に自ら命を絶ってしまいました。

美緒は洗脳され森沢といる時は少女服を着て何処に行くときも報告させられていました。しかし男性といても体が震えなくなり偶然デートに誘われた彼に話すと洗脳されている事を知らされ逃げ出すべきだと言われたのです。

その後森沢から連絡はなく美緒はその男性と結婚する事が決まっており新田は良い人に救われて良かったと思います。

ずっと口を閉ざしていた森沢から話してもいいと指名され新田は取調室に入ります。

妹の面影を求め洗脳したはずの春菜と室瀬亜美が男に心を許し絶対に看過ぎできない裏切り行為だったから殺害したのかと新田は聞くと森沢は取り乱し激怒します。

妹は犯人を逮捕してほしくて頑張って事細かく伝えたがレ○○された噂だけが広まり警察は犯人を捕まえないどころか「犬に咬まれたと思って早く忘れろ」と薄ら笑いを浮かべたのです。

森沢はこの絶好の場で殺人事件が起これば警察の権威は失墜し妹に顔向けできる、復讐だったんだと口にするがやがて言葉に力はなくなり膝から崩れ落ちました。

 

尚美は総支配人室に行くとそこには日下部がいました。

実は日下部は北米支部担当局の香坂でコルテシア・ロサンゼルスの日本人スタッフの選出を任されており支配人から推薦を受けチェックしていたのです。

プロポーズ相手の妙子も香坂のアシスタントだったのです。尚美は合格をもらいロサンゼルス行きが確定しました。

新田は祝福の言葉を述べるため宿泊し尚美とディナーを楽しみました、終。

 

感想/

マスカレードシリーズを読むと私には接客が無理だと心の底から思う。

この作品はクレームというものはほぼなかったが面倒な頼み事がありましたね。ちょっと頑張れば自分でなんとか出来るでしょ(笑)。

さて、まず思うのは潜入捜査している大事な時に尚美のテストなんかするなよって事。「なんじゃそれ」と呆れてしまった。

殺人事件が起こるかも知れない大事な時に日下部と妙子のしょーもないテストがなければ負担は減るわけだし、しかも更にテストを急遽行ない、その相手が犯人で女装していたなんて(笑)。

そして急に終盤に懸けて詰め込んできた感が強い。

一番怖いのは万智子と由里の関係と2人の性格、人間の嫌な部分を2人が全部持っている感じ、ましてや万智子は母親、子供がかわいそうでならない。

森沢の動機もちょっとしっくりこないな。これが警察に対し何の復讐になるのか、そもそも妹に対する警察の言葉も悪いが森沢は2人の命を奪っているわけで同じ事をしているではないか。

自分としてはこのマスカレードシリーズは終わって欲しいのが本音かな。

と思っていたのですが・・・

マスカレードシリーズ4弾「マスカレード・ゲーム」ネタバレ感想はこちら