作品情報/薬丸岳「ガーディアン」
少年法がテーマである「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を獲得。
刑事もの夏目シリーズはドラマ化され、映画化された「友罪」や「Aではない君と」などが代表作。
ネタバレあらすじ/ガーディアン(薬丸岳)
新任教師の秋葉は石原中学に赴任し問題児が1人もいない事に驚きます。
他の生徒の目を気にせず悩みや相談を訴える投書箱が設けられ教師達は会議を開き話し合います。
そんな学校のなかで1年以上登校しない八巻という生徒がいるが彼は問題がある生徒でどちらかと言えばイジメする側の人間でした。
石原中学に入学するとフリーメールアドレスが回ってくる。
ガーディアン(保護者、守護する)のメンバーになると学校での身の安全が保障されるのです。
しかし条件があり破るとガーディアンから制裁が下される。
①ガーディアンの存在を誰にも明かしてはいけない。
②メンバーであってもガーディアンの存在を口にしてはいけない。
③生徒の不正を見付けたら報告する事。
④ガーディアンとメンバーを裏切らない。
⑤制裁として机に折鶴が置かれた生徒とは話してはならない。
三宅彩華は重い病気と戦いながらも頑張って学校に通っていました。
ある日、八巻が三宅の帽子を取り脱毛した頭を揶揄う悪ふざけが始まりました。
三宅と仲良かった大雅は八巻と喧嘩になりながら帽子を奪い取るが千羽鶴が完成する前に亡くなった報せが入りました。
それから大雅は八巻たちから酷い虐めを受けるようになりました。
小学生の時に三宅、大雅と仲良かった小野悠は投書箱で大雅を助けるよう伝えるが教師は無力だと感じました。
小野、三宅の親友だった常盤結衣、そして大雅の事が好きでずっと見てきた吉岡優奈がガーディアンを作り出したのです。
生徒達から信頼を集めなければと思い教師の中でも指導が厳しく生徒から嫌われていた体育教師に、セクハラされた女子生徒がいると噂を流しPTAの圧力を利用して担任とサッカー部顧問を外させました。
また八巻は5歳の時に虐待されており親が逮捕され記事になった事がありました。来年中学に入学する弟想いだと協力者から情報を得てネタにして生徒達にバラされたくなければ学校に来るなと脅したのです。
大雅を虐めていたのは他に2人いたが八巻から強要されていたと知り許す代わりにガーディアンの噂を流すよう言いました。
これがガーディアンの活動のスタートだが1年経った今では教師達に伝える投書箱よりガーディアンを頼る生徒が増えていき鶴が置かれた生徒には全員が無視するようになっていた。
石原中学はかなり荒れていたがガーディアンの存在により平和になった。
しかし、すぐに解除されるとは言え変わりに不登校になる生徒もいる。
ガーディアンの存在を調べようとしていたため秋葉は制裁を下され女子高生のイメクラに出入りしている噂を流された。
秋葉は徹底的に無視され、生徒の一部ではなく学校全体がガーディアンなのだと気付かされます。
大雅を虐めていた八巻と一緒に制裁を下された赤塚の密告により秋葉は大雅と親しかった生徒が黒幕ではないかと疑います。
大雅に聞くと先生に助けを求めた事もないし仲良い人なんていないと返答されるが大雅自身1人だけいると思っていました。
秋葉は大雅のイジメの件を調べているうちに仲良かった女子生徒が病気で亡くなった事を知ります。
亡くなった女子生徒と親友だった常盤結衣にたどり着き、そしてガーディアンの制裁に屈しなかった事を称えられ小野悠が名乗り出てくれました。
ガーディアンがやっている事は犯罪でありイジメと変わらないと秋葉は説得にかかります。
小野は多くの生徒を守って来たと説明し、これからの生徒達のためにも協力して欲しいと言って来ました。
話を聞いているうちに学年主任の下田が襲撃され入院したのは、生徒を不良グループから抜けさせるためにわざと挑発して暴行させたのだと気付きます。ガーディアンは撮影をして警察に報せると脅したのです。
結末/ガーディアン
入院する下田を訪れ、やっている事は同僚を裏切る行為だと言い放つと他の先生も皆ガーディアンの協力者だと言われます。
職員がガーディアンの存在を認めていた事に驚く秋葉はガーディアンの存在によって助かる人がいるのは事実だが失われるものがあまりに多過ぎると言います。
”教師は万能ではないが無力ではないはずだ”
全員揃って卒業するには八巻の制裁を解除せねばならないと職員達は秋葉の意見に同意します。
また助けを求める手紙は誰が書いたのか教師達は必死に探していました。手紙の中に毛髪を見付けDNA鑑定するため頭髪検査を厳しくしていたのです。
仲の良い友達なんていないと言った大雅に秋葉は、おまえを助けるためにガーディアンが結成されたのだと教えました。
そしてガーディアンの存在よりも本当に守ってくれるのは顔の見える友達だと思わないかと問いかけました。
大雅は虐めを受けていた時にたった1人だけ話しかけてくれた吉岡優奈に感謝の言葉を言います。
「ガーディアンには感謝しないが優奈には心から感謝している。おまえがいなければ俺はここにいないから。」
大雅と別れた後、優奈はガーディアンを卒業するとメールを送りました。
また小野に会いに行き「どうして虐めを受けている時に話しかけてくれなかったのか?」聞きます。
虐めを受けていた時、苦しかったが一番辛いのは孤独だった事だと言いました。
吉岡優奈がガーディアンを卒業するとメールを送ってから活動は止まり八巻が登校しました。
全生徒集まった卒業式。優奈は卒業生代表として壇上に上がります。
”大人は自分の事を何も見てない、何も分かっていないと思っていたが、分かって貰えるように努力していない事に気付きました。
本当の自分の気持ちを隠して過ごしてきたが今まで持てなかった勇気を持ってこれから歩んでいきます”