作品情報/友罪
最初に感想を書いてしまいますがとても考えさせられた作品でした。
親友だと思っていた人が凶悪事件の犯人だと知ったらどう接するだろうか。妙に納得してしまったのが「今現在の本人を知らない人は分かろうとしない」ということ。
本当に罪を償い悩みながら必死に前を向こうと努力していた場合はどうだろうか。しかしそんな事を知る事が出来るのはやはり深く関わった人だけであり「ただの人殺し」としか見れないですよね。
反省せず同じ事をしているのがほとんどだと聞いた事もありますし難しいテーマです。
ただ遺族からしたら絶対に許せないわけでどれだけ反省しようが関係ないですよね。
監督は「8年越しの花嫁」などを手掛けた瀬々敬久。
原作は「Aではない君と」など、「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳。
キャスト
益田純一 (生田斗真)
元記者。ジャーナリストになる夢を断念し町工場で働く。中学時代に同級生が自殺した件で誰にも言えない秘密を抱える
鈴木秀人 (瑛太)
無口で暗い雰囲気を持つ。同じ寮生活の益田と仲良くなり事務員の美代子と恋仲になるが実は誰もが知る少年A。必死にやり直そうと努力するが・・・
藤沢美代子 (夏帆)
町工場の事務員(映画では別の仕事場に勤務するテレホンアポインター)。憧れて状況したが恋人の達也に騙されAVに出演させられた過去があり逃げながら生活している。
杉本清美 (山本美月)
益田の元恋人で雑誌編集者。
白石弥生 (富田靖子)
医療少年院で凶悪事件の犯人・青柳健太郎の担当精神科医
唐木達也 (忍成修吾)
美代子の過去をばらしてやると嫌がらせをし続ける。
山内修司 (佐藤浩市)
タクシードライバー。原作では益田や鈴木などが生活する寮長。
息子の罪を自分なりの方法で償っている。
※原作と映画が混ざっています。一応説明を加えていますがご了承ください
ネタバレあらすじ/友罪
出会い
元記者でジャーナリストを夢見る益田純一はネットカフェで暮らすようになるが金がなくなっていき寮がある会社「カワケン製作所」に就職します。
採用されたのは益田だけではなく同い年の鈴木秀人がいました。
寮には寮長をしている山内、強面な感じの清水、若い内海が住んでいて益田は挨拶するが鈴木はいつも下を向いていました。元記者だと知ると鈴木は「他人を詮索していて辛くない?」と言い部屋に入っていきました。
寮生活する先輩方は鈴木があまりに暗く誰とも話さないので買物を頼んで部屋を物色し、益田もその場に流されて付いていくと女性の絵を描いたスケッチブックと両親の顔が切られている写真を目にします。
中学生の時にイジメを苦に自殺してしまった桜井学と雰囲気が似ていたので心配になり 寮や仕事ではみんなと仲良くした方がいいと鈴木に伝えました。
「俺が自殺したら悲しい?」と聞かれた益田は戸惑うが「当たり前じゃないか、悲しいに決まってるだろ」と返事しました。
学の母親は自殺の理由を探っていたが新聞社に告発する手紙が届けられた事で「イジメ」だと分かったのです。益田は今でも命日に母親を訪ねているが「いつまでも強くて正しい人でいてね」と言われ困惑します。
不正のない世の中にしたいとジャーナリストを目指していたが学の件を思い出すと「そもそもそんな資格はない」と自己嫌悪に陥るのです。
生き物が苦手
事務員の藤沢美代子は(映画では別の会社に勤めるテレホンアポインター)河川敷で弁当を食べていると猫をやたら怖がる鈴木を目にし声をかけます。
「生きものは苦手なんだ」
美代子は女優を夢見て実家を飛び出すが東京で出合った達也に騙されAV女優となってしまったのです。ずっと逃げ続けようやく誰からも気付かれない場所を見付けていたのです。帰宅途中に子猫を見付け連れて帰った美代子は鈴木はどこか自分に似ていると思うが達也に居場所を突き止められ脅えます。
そこへ偶然目撃していた鈴木が助けに来てくれるが達也に一方的に殴られます。
事情を聞いた鈴木は「人を殺したわけではないのだから逃げ回ることはない」と言いました。
鈴木の携帯のアドレスには1件しかなく誰でも知っているような事を知らないので驚くが美代子とデートを重ねるうち笑顔を見せるようになり寮でもみんなと良い関係を築くようになります。
誰もが知る凶悪事件
益田は仕事中に不注意で指二本を切断してしまうが鈴木の的確な処置のおかげで手術は成功します。
毎日お見舞いに来てくれる鈴木は益田の学生時代の話や恋愛の話などやたら聞いてくるが自分は引きこもりだったからと何も話しません。
少年犯罪の特集をやるから五芒星事件(原作では黒蛇神事件)に付いて意見を聞きたいと元恋人で雑誌編集者の杉本清美にお願いされていた益田は児童殺害事件=五芒星事件についての本をいくつか用意して欲しいと鈴木に頼みました。
”「黒蛇神事件」は空想に入り込んだ当時14歳の青柳健太郎が母親が可愛がっている弟と同い年の子供二人を殺した事件で、遺体は両目がくり抜かれており「黒蛇神に捧げた命だから喜びと受け止めよ」と文面を残した”(原作)
(映画では現場に五芒星のマークが残されており儀式の映像が残されている)
●鈴木は有名な歌などまったく知らない
●美代子の過去がばれ寮に出演していたDVDが届くが「過去をほじくり出すな」と鈴木が暴れる
●「彼女は僕と違って悪いことしていない」と発言
退院して部屋で五芒星事件について調べていた益田は犯人である14歳の青柳健太郎が鈴木にそっくりなため驚きます。また医療少年院で青柳の母親役を務め立ち直らせた白石弥生の写真を見てスケッチブックに描かれていた絵とそっくりな人物だと気付きます。
「おまえ何やったんだよ・・・友達なら教えてくれよ」
益田は鈴木に聞くが、鈴木はDVDが届けられた事で美代子が危険だと思い「行かなくちゃ」とつぶやいて走り出します。
達也を見付け因縁をつける鈴木は殴られても立ちあがり「やるならやれよ、殺すのは簡単だ」と言いながら近付くと不気味に感じた達也は逃げていきます。
鈴木は「過去に人を殺した事があるが、死んだら悲しいと人生ではじめて言ってくれた親友の益田に最初に話したい」と美代子に言いました。
(映画では伝えていない。美代子は後に出る記事で知る事になる)
親友が少年A
益田は事件についてホームページを作る青柳の同級生に一緒にカラオケで楽しんだ時の鈴木の写真を見せると本人だと知らされます。
調査すると幼い頃に母親の死を経験してから性的発達がおかしくなり子供を殺害後G行為をしていました。幼い頃から破壊衝動を心の中に潜め、今現在必死に押さえ一生懸命生きているのではないだろうかと思います。またそれは誰にも分かって貰えず同じ喪失感を持った人でないと理解できないだろうと思います。
益田は自分なりに記事を纏めて清美に渡すと青柳健太郎の現在の映像を見せて欲しいと頼まれ迷ったあげく見せてしまいます。
益田は鈴木を飲みに誘い話を聞こうとするが「益田も何かから逃げているはず、それを自分も背負ってこの先の事を考えたい」と言われ耐えられなくなり一緒にするなと怒鳴ってしまいます。
「子供の頃、人を殺してしまった。僕がしてしまった罪とは比べものにならないだろうけど、償えきれない罪を犯してしまった人になら理解してもらえるかもしれない。益田くんになら話せるかも知れない」
抱えている苦しさを教えてほしいと言われた益田は抱えて生きていくしかないだろうと言い放ちます。
後悔
「青柳健太郎の今」という記事が載ってしまいます。
益田は会社に押しかけ清美に怒りをぶつけると編集長に「世間が知りたがっているんだ」と言われ掴みかかります。
罪を必死で償って頑張って生きている者に対して、また同じ事件を引き起こしかねないと嘘の記事を載せるのはいいのか!!と言い放つが「世間が知りたがっているのを伝えられないのならジャーナリストになる資格はない」と言われます。
寮生活するものは雑誌を見て鈴木が青柳だと気付き、益田は急いで帰ると鈴木は部屋にいました。
「悪いのは俺だから。みんなと会えて本当に良かったと思っている」
鈴木に言われた益田は「自分のせいでこんなことに・・・」と泣いて謝罪すると「もういいんだ、ありがとう」と鈴木は言いました。
翌朝、鈴木は「今までありがとう、さようなら」と置き手紙を残し姿を消してしまいました。
寮長の山内の息子は無免許で起こした交通事故で3人の命を奪っていました。
どうやって償えばいいのかと考えた山内は死ぬまで息子と会わないと決心して罪を償っており鈴木には逃げずに生きて欲しいと願っていました。
(映画では山内はタクシードライバーで益田を病院に運ぶ。罪の償い方は原作と同じだが3人の命を奪った息子が子供を作って結婚すると聞いて怒りをぶつけに行っている
結末「友罪」
鈴木が生きていく居場所を奪っただけだと後悔する益田は鈴木を死なせたくないと思います。
「二度と友達を死なせなくない」
実は学が自殺する直前「死にたい」と益田の元に電話がかかってきていたのです。
しかし虐めっ子たちが家にいたので視線が気になってしまい「勝手にすれば」と言ってしまったのです。
益田は最後の「さよなら」という学の声を忘れる事ができず苦しんでおり同じ事を鈴木にもしてしまったと思います。
学の母親に会いに行き告発の手紙を書いたのは自分ではないと告げると実は学の遺書を丸写しして母親が新聞社に送っていたことを知らされます。
遺書には益田のことだけは書かれていませんでした。益田は真実を話し謝罪しました。
(映画では学の母親が危篤だと知らせを受けた益田が駆け付け泣きじゃくりながら謝罪しています)
”自分が犯してしまった罪を見つめながらしっかり生きて欲しい。
もう一度君に会いたい。
話の続きをして、これから先どのようにして生きていけばいいのか一緒に考えよう。
どんなことがあっても友達でいるといった約束を果たしたい”
益田は本名で鈴木宛に手記を発表しました(終)