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「アーモンド」ネタバレ含む感想結末/2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位

作品情報

本国韓国で40万部を突破し13カ国で翻訳されたソン・ウォンピョンによる感動小説。

日本では矢島暁子が翻訳を務め2020年本屋大賞翻訳小説部門1位を獲得。

ソン・ウォンピョン/1979年ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学び韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年に第6回「シネ21」映画評論賞受賞し2006年には「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞した。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本演出を手掛ける。2016年に初の長編小説「アーモンド」で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞し多くの読者から支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、小説家など幅広く活躍している。
 
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扁桃体が人より小さく怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生ユンジェは祖母と母親が通り魔に襲われたときもただ黙って見ているだけでした。

母親は感情がわからないヨンジェに「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」などの感情を丸暗記させ「普通の子」に見えるように努力する。

母親が事件によって植物状態になるとユンジェはひとりぼっちに。そんなとき激しい感情を持つ少年ゴニとの出会いが人生を大きく変えていく。

感情が分からない怪物と呼ばれた少年が愛によって変わるまで。

 

 

ネタバレあらすじ/アーモンド

 

ユンジェが、誰もが頭の中に2つ持つアーモンド型の扁桃体が小さいと分かったのは4歳の時。

幼稚園の時に少年が殴られているのを亡くなるまで黙って見ていた。小学生の時には目の前を歩いている女の子が転んで泣いても呆然としているだけだった。

おかしな子だと近所では広まっており、祖母は「かわいい怪物だよ。人は自分たちと違う人間を許せないんだよ」と頭をなでてくれました。

アーモンドが壊れ赤信号がうまく灯らないので何で笑っているのか、何で怒っているのかユンジェには分からないのです。やっかいなのは恐怖心がない事、恐怖心がないとゆう事は自分が危険なことをしていても分からないのだ。

母親がはじめた古本屋でユンジェは母親と祖母と3人で暮らします。

 

普通の子に見せるための教育

母親はユンジェが普通の子に見えるように「喜、怒、哀、楽、愛、悪、欲」の感情を丸暗記させます。

例・友達が新しいオモチャを見せて説明するときは、「説明」しているのではなく「自慢」だ。その時の模範解答は「いいなぁ」です。

小学校の高学年になると目立つことはないが集団に溶け込めるようになりました。

しかし返答ならともかく先手をうつのはまだヨンジェには難しいところだった。

12月24はユンジェの誕生日、

17になるその年は雪が降っていた。祖母と母親に連れられ外食したが帰るときに遺書を残した通り魔がハンマーとナイフを持って現われた。

母親は何度もハンマーで殴られ昏睡状態になり祖母はユンジェがドアを開けないように守りながら刺され亡くなりました。

祖母の遺産で暮らすユンジェは病室で眠る母親に毎日会いに行きます。

古本屋の2階に住む元医者のシムは母親から頼まれていた事もあり保護者になります。

「保険金は将来のために置いといて店を続けなさい、この建物の持ち主は私だからアルバイトして給料は払う」と言われたユンジェはありえない提案をされた時には時間を稼げと母親から教えられていたので「考えときます」と返事しました。

どう考えても危険な話ではないので受け入れるが母親は普通の暮らしをさせたいと思っていたはずと分かるユンジェは高校に行くことにしました。

 

激しい感情を持つ少年

ある日、シムに紹介された大学教授グォノがやってきます。

グォノにはもうすぐ亡くなってしまう妻がいて13年前に遊園地でいなくなってしまった息子に会わせたいと探していました。最近見付かったが問題児だったので似ている理由で「息子のフリをして欲しい」と頼まれます。

「害がないのなら人助けはした方が良い」と祖母に言われていたので引き受けることにしました。

病室を訪ねたユンジェは頼まれていた通りに苦労せずに育った事を伝えると抱き締められるがそのまま昏睡状態になり息を引き取りました。

なんとなく葬儀に行った方がいいのではと思い向かうが転校生のユン・イス(ゴニ)がやってきたので驚きます。転校初日から先生には刃向かい生徒達も怖がっていた。その転校生がグォノの息子だったのです。

ユンジェは毎日ゴニから苛められるようになるが悲しい顔すら何もしないのでそっちが体力消耗するだけだと思います。

ゴニは不気味に感じ出すとやがて自分がびびっていると噂されるようになり、黒板に「焼却炉に来い」とでっかく書き「来れば殴る、来なければ怖じ気付いたとゆう事でもう止めてやる」と教室で叫びます。

ユンジェはいつもその時間に通っているのでいつものように歩きゴニを素通りすると後ろから殴られ続けます。やがて野次馬がヤバいと散っていくのを見て通り魔の光景を思い出したユンジェは止めなければならないと思い「もう止めろって。みんな怖がっているフリをしているだけで内心馬鹿にしてるんだから」と冷静に話します。

ゴニは一週間の停学処分となりました。

 

世の中を理解するために必要な存在

ゴニに殴られてもユンジェはまるで怖くなかったが逃げるべきだったと言われて気付きます。だけど世の中の事を理解するにはユンジェは必要だと思います。

祖母や母親がどうなったか、そして扁桃体が小さく何も感じない事を知りゴニはいろいろ質問してきます。

「俺だったら犯人を殺してやるよ、本音を言えば話を聞いただけでイライラして眠れなかった」

「僕のせいで眠れなくてゴメン」と伝えると「事件を黙って見ていただけで婆ちゃんにゴメンも言わない奴が俺に言うのかよ、イカれてんな」と罵られるが、彼は毎日のように本屋にやってきました。

ある日、ゴニは蝶を持ってきて羽を掴んで両側に引っ張り出しました。ユンジェは「痛がっていると思う、苦しんでいると思うから止めた方がいい」と伝えるが「かわいそうとは思わないのか」と聞かれます。

止めてと言っても「感じるのはそれだけか」とゴニはイライラし結局羽をちぎって踏み潰しそれから店に来なくなった。

「君と友達になりたかったんじゃないか、自尊心が傷付いたと思う。たまには君から訪ねてみたら」とシムに言われます。

ユンジェはゴニの家を訪ねるとあいかわらずグォノとは関係性がよくないようでした。

そしてなんで本屋にずっと来ていたか、それは「自分がどんな人間なのか勝手に決め付けなかった事」、そして生存していた時の母親がどんな人だったかずっと聞きたかったからでした。

ユンジェは「君と似ていたよ、最後は抱き締めてくれた」と伝えるとゴニは悔しそうに涙を見せました。

 

愛とは何か。

ユンジェは「愛とは何か」聞くとゴニは「お前には婆ちゃんや母ちゃんがいたろ、俺に聞くな」と言われます。

婆ちゃんが「愛」を「かわいさの発見」と言いながら最後の「心」の点は家族3人だと言っていた。

ユンジェは一人の女性ドラの顔を思い浮かべます。ドラは人に無関心で校庭を眺めているだけでした。一人で体力作りをしているようで「走ってどうするの」と普通に聞くが嫌いな質問だと怒られます。しかし「あんた何も感じないって本当?」と店にやってきました。

「この間は怒ってゴメン。陸上の事初めて聞かれたから、君は将来どうすんの」

「分からない、聞かれた事なかったから」

ドラは両親から陸上をやりたい夢を壊され先を見失い、ユンジェは聞かれた事もなかったので考えた事もありませんでした。

ある日、風が強い日にドラの髪が自分の顔に触れたときから感触と匂いが忘れられず初めての感覚を得ます。風邪を引いたと思い薬を飲むがシムから「成長しているんだ」と言われます。

身長も伸びたし、ゴニには何かドラの事を言いたくなかった、そしてシムにすべて報告するのも嫌だった。確かに何か変化しているが異性への関心だと言われ「ドラが好きなのか」と考えます。

母親に毎日会いに行っていると知ったドラは付いてきます。彼女は母親の手を握り挨拶しました。やってみなと言われたユンジェはどうせ寝ているから聞こえないと思い何にも話して来なかったことに気付きます。

本を片付けている時にユンジェは「自分についていつか文章が書けるようになりたい」と思います。「自分のこと理解出来ないのに」とドラはやってきて胸に耳を当て「心臓の鼓動が早くなったのは私が近付いて嬉しいんだよ」と言いました。ドラは顔をあげユンジェは初めてのキスを自然としました。

 

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結末/アーモンド

集めた金がなくなる事件がありゴニにはアリバイがあったが皆から疑われ父親グォノはお金を払いました。

それからゴニはまた暴れるようになり「出て行きなよ、クズ」とドラに言われた事で激怒しながら教室を出て行きました。

「俺がやったと思うか」と聞かれたユンジェは「可能性は全員にあるけど思われても仕方ないことをしてると思う」と答えました。

ゴニは決意したように裏社会で生きると決めもう会うことはないと思うと去って行きました。

帰ってくるよう伝えてくれとお願いされたユンジェは考えこむと「君のお母さんの前で息子のフリをしたこと、君はそんな事するような人じゃないと言ってあげられなかったこと」を謝罪しなければいけないと思います。

ゴニは刑務所の先輩「針金」と呼ばれる人のところに行ったと知ります。

ドラから何でそこまでするのと聞かれ「友達だから」と伝えました。

教えてもらった場所に行くと傷だらけのゴニがいました。根性試し、耐えられるか試されたのだろう。

どんなに怒鳴られてもユンジェは「家に帰ろう、お父さんが待っている」と告げます。そしてナイフを手にし殴られても「君の本心じゃない、君は痛みを感じれるはず、一緒に帰ろう」と言い続けます。

そこに針金が「誰だコイツ」とやってきます。「友達だから連れて帰る。ゴニのためなら何でも出来る」と伝えると針金から容赦なくやられます。

針金がナイフを持ってゴニに近付いたので力を振り絞ってゴニを押しのけるとナイフが自分に突き刺さりました。

ユンジェは目を覚ますと病院にいました。ゴニは針金を刺し必死に声をかけながら病院に運んでくれたようです。

ユンジェが再び歩けるようになるまで数ヶ月かかりました。

ドラは陸上部のある高校に転校し夢を取り戻したようだった。そしてシムから手渡されたゴニの手紙には「ごめん。そしてありがとう。心から。」と書かれていました。

そこに車椅子の母親が病室に入ってきました。ユンジェは「母さん」とつぶやき、泣きじゃくる母親を抱き締めました。

「不可能なことをやったのはあなたよ」と言われたユンジェの目からは涙がこぼれていました。

 

感想/アーモンド

ちょっと綺麗事に感じてしまったかな。

「愛で人は救える」と確かに思うが怖い場所に足を運んで命を捨てる覚悟ができるのはなかなか出来ない事でしょう。

「母親が子供のために」はあるかもしれない。私の場合、愛犬を守るためだったら何か出来るかも知れない。

人の気持ちが分からず自分の性格すら分からない人をたまに見掛ける。ユンジェは世の中を理解したいと向上心がありその段階で既に普通の人以上のように私には感じられました。

「話を聞かない」と文句言ってるだけの人もいれば「話を聞いてももらえない自分の性格が悪い」と自分と向き合う人もいる。

ユンジェは考えた結果、共感できても行動出来ないならそれは本物ではないからそんな生き方はしたくないという考えに行き着いた。だからゴニを連れ戻そうと行動に出た。

だけど誰も刺されたくない、共感は出来ても大抵の人は助けられずに逃げるか怖くて足がとまってしまうものだと思う。これは恐怖心を感じられないからこそ行き着いた考えのように思えてしまう。

黙って見ているだけだった事件があまりにも衝撃的過ぎて、そのあとの普通の生活や考えにギャップがありすぎたように思えてしまったかな。好みの問題ですが私には泣ける場面は正直なかった。帯が大袈裟に宣伝しすぎではないかと思います。

ただ、母親の愛情は感じられたし理解は出来る。そしてユンジェは愛情を受けて育ち他人の気持ちを理解しようと努力し確実に成長している。むしろゴニの方が成長しているのではないかな。

 

小説/BOOK
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