作品情報
東野圭吾によるサスペンス小説で2014年に映画化、2014年にWOWOWでドラマ化された作品。
事件に巻き込まれ頭を銃で撃ち抜かれた純一は世界初の成人脳移植で助かるが自分の感情の異変に気付き始める。
ドナーが気になり独自に調べて訪ねると記録にあった名前の人はドナーではないと直感する。やがて自分の人格が支配され周囲の者が巻き込まれていく。
キャストの紹介(左が映画・右がドラマ)
成瀬純一(玉木宏・神木隆之介)
産業メーカー工場で働いている24歳。絵を描くのが趣味で美大に進みたかった。お店で事件に巻き込まれ子供を救おうとして頭を撃たれるが世界初の脳移植で助かる。
葉村恵(蒼井優・二階堂ふみ)
画材ショップ店員でそばかすがチャームポイントの純一の恋人。デザイナーを夢見て断念。脳移植で助かった純一の異変に気付き始める。
橘直子(佐田真由美・臼田あさ美)
大学教授の助手。脳移植した純一を徹底してマークし情報を内密に伝えているが・・・。
京極瞬介(松田悟志・渡部豪太)
音大を卒業している。心臓が悪かった母親をほったらかしにした内縁の夫に復讐するため不動産屋を襲撃。この事件で純一が撃たれている。本人は拳銃自殺。
京極亮子(釈由美子・本田翼)
瞬介の妹。訪ねてきた純一を見て不思議な感覚を抱く。
堂元英隆/堂元博(北村和夫・伊武雅刀)
大学病院脳神経外科教授。
若生健一(山下徹大・東根作寿英)
教授の助手。橘直子に好意があるため純一に接近する彼女を心配する。
ネタバレあらすじ/変身
世界初の成人脳移植
画家を目指し美大に進もうと決めていた成瀬純一は両親が他界した事で夢を諦め産業メーカーの工場で働いています。
ある日、不動産屋に行くといきなり銃を持った男が乱入してきました。優しくて大人しい性格の純一は咄嗟に近くにいた少女を助けたが頭を撃たれてしまいます。
昏睡状態から目覚めた純一は病院のベッドの上で徐々に記憶が戻ると世話係を担当していた博士の助手・橘直子から犯人の京極瞬介は自殺し治療費は大学の研究費から出された事を知らされます。
そして博士から「世界初の成人脳移植出術が無事終了」と書かれた新聞を見せられ純一は驚きます。
感情の変化
恋人の葉山恵に画材を持ってきてもらい絵を描くが「タッチが何か変ったね」と言われます。
職場の同僚から上司の愚痴を聞かされお灸を添えるしかないと伝えるが会社では悪口など無縁で「お利口さん」とあだ名が付くほどだったので「お前本当に純一か」と笑われます。
純一も性格が変わった事をなんとなく自覚していました。
あれだけ愛していた恵のチャームポイントだったそばかすも何か嫌だと感じるようになっていたからです。
退院して職場復帰するが大人しかった純一は我慢できず反抗するようになって孤立し恵の事も苦痛になります。そして隣の部屋が煩いので我慢できずドアを叩いて文句を言い放ちます。
カッとなって殺意を感じ怒鳴ったりするようになる純一。
嫌われている事を内心気付いていた恵は怖くなって逃げ出してしまいます。
ドナー調査
堂元博士に会ってたびたび検査する純一だったが何か隠されていると思い問い詰めるとドナーは交通事故で亡くなった関谷時雄と知らされます。
父親が喫茶店をしていたので訪ねに行き話を伺うと時雄は喧嘩をするような人ではなくボランティアをするなど人付き合いが良かったと知ります。
純一はドナーである家族に会ったら家族のような何かを感じるのではないかと想っていたので直感的に違うのではないかと思います。
事件の時に巻き込まれた娘の典子を救った事から彼女の父親の嵯峨道彦が入院費などを払ってくれていた事を橘直子から聞かされます。
自宅に招待されたので直子と一緒に訪ねます。典子がピアノを演奏してくれたので気分良く聴いていた純一だったが楽器など触った事もないのに音がおかしいと気付きます。
弁護士の道彦はその話を聞いて「そういえば自殺した犯人は音大に通っていたみたいですね」と聞かされドナーは瞬介ではないかと疑います。
調べると瞬介には妹の亮子がいる事が分かり会いに行くと自分でも驚くほど一体感を感じました。それは純一だけでなく亮子もそうでした。
瞬介を調べるとエディプス・コンプレックス(自分の性を意識する事で身近な異性である母親に愛着を抱き父親にライバル心を持ち)だと分かります。
純一と共に撃たれた不動産屋の社長の番場は籍は入っていないが瞬介の父親だったのです。心臓が悪くなった母親が亡くなり治療代も出さずほったらかしにしていた事が犯行の動機でした。
”左半側空間無視の症状が出たのは本来の右脳意識が消滅しつつあるからであり、
その代わりに京極の意識が右脳を支配し始めてるので音楽的才能が向上した”
結末/変身
純一は大学病院に行き問い詰めると認めたのでもう検査は受けに来ない事を伝え博士をぶん殴ります。
徐々に自分の人格が支配されていく事に恐怖を感じる純一は苛立ちから直子の体を奪うがそれがあっても彼女は「心配している」と近付いてくるので信用するようになります。
しかし飲みに行った店で若者たちがギャーギャー煩いのでビール瓶で叩きのめし帰宅すると自分が付けていた日記をコピーして直子が博士に送っていた事を知ります。
激怒して彼女の首を絞めバラバラにして捨てました。
完全に支配されつつ純一は店で煩い若者を叩きのめし近所で煩い犬を殺したりするようになります。
ニュースを見た恵は純一の仕業だと思い「愛しているから最後まで一緒にいる」と決心し部屋に戻ります。
しかし行方不明となった直子の事が好きだった研究員の若生は純一の仕業だと復讐を誓い、また脳移植失敗を隠したい政府関係者も消すしかないと思います。
純一は家に侵入してきた者に拉致され殺されかけるが恵が裏切ったのだと思いなんとか逃げ出します。
家にいない純一を心配して探し回っていた恵。
心配して駆け寄ってきた恵の首を純一は絞め殺そうとしたが何故か力が入りませんでした。
本来の自分もどこかにいるのだと気付く純一は自分を取り戻すため博士に会いに行きサンプルがない事を確認して警官から奪った銃で頭を撃ち抜きました。
純一が描き残した絵は高く評価されます。恵は延命費のために売っていたが自分が消えてしまう前に必死で描いてくれた未完成の裸体画だけは売らずに大事に持っていました。
感想/変身
いやいや、怖い!!自分の人格が支配されていくなんて。
単純に考えても「ありえそう」な話だしプラスになるのならともかく命を助けるためとはいえ犯罪者になるのは恐怖でしかない。
そして恵がかわいそうで涙が出る。おそらくお見舞いに来てくれている時から愛されていないと気付いていたでしょう。信じて待っていたが大人しかった彼の性格が凶暴になったら逃げますよね。
彼の元に戻ったのはやはり愛していたからで、本来の純一に戻るはずだと信じたかったのかもしれない。このあと純一が目を開け本来の彼に戻っていたらいいですね。