作品情報とキャストの紹介
原作・東野圭吾によるベストセラー加賀シリーズを「七つの会議」を手掛ける監督・福澤克雄が映画化した作品!
先に原作を読むとたまにがっかりする事が多いですが原作を忠実に再現した作りになっており間違いなく涙を誘う。
アパートで滋賀県在住の女性の絞殺死体が発見される。部屋の住民は行方不明だったがやがて焼死体で発見された人物だと分かる。
発見されたカレンダーには毎月、日本橋にある橋が書かれていたがそれは亡くなった加賀の母親が残したメモと同じであり筆跡鑑定の結果、同一人物だと分かる。
被害者も容疑者も自分に関係があると気付いた加賀はある仮説を立てるが・・・・。
ネタバレあらすじ/祈りの幕が下りる時
加賀シリーズ最終章ですが初めて母親の事が詳しく出てきます。
母親・百合子は離婚してから仙台に向かい小料理屋を経営する宮本康代に雇ってもらい生活していたが十数年後に心不全で亡くなっています。
連絡を受けた警視庁捜査一課の加賀恭一郎は遺骨を受け取りに行くが母親の恋人である綿部が自分の住所を康代に知らせたあと行方不明だと聞かされます。
母親は家庭を捨てて出て行ったのではなく欝病だったのです。そんな事に気付いてやれなかった父親は悔やみ死ぬ時は1人だと決めたのです(詳しくは⇒赤い指)
東京で起きた二つの事件
●ハウスクリーニング会社に勤務する滋賀県在住の押谷道子が東京葛飾区のアパートの一室で遺体として発見されました。
部屋の住人の名が越川睦夫だと分かるが行方が分かりません。
●新小岩の河川敷でホームレスの焼死体が発見されます。事故かと思われたが解剖の結果、首を絞められてから燃やされた事が分かります。
従弟の松宮刑事から相談された加賀は現在自ら進んで日本橋署にいました。
アパートの部屋を見た松宮はその日暮らしのようだと分かり、まるでホームレスのテント小屋と一緒だと勘が働き焼死体は越川ではないかと調べるがDNA鑑定の結果間違いでした。
加賀は同一人物だと疑われないためのフェイクでDNA鑑定した物が別人のではないかと推理するとまさにビンゴで焼死体は越川睦夫と判明し事件が繋がります。
遺品と同じメモ
越川睦夫の部屋にあるカレンダーにはすべての月に日本橋にある橋が書き込まれていました。
それを聞いた加賀は驚きます。母親・百合子の遺品のメモと一緒だったため筆跡鑑定をお願いすると同じだと分かり母親の恋人で行方不明の綿部であると判明しました。
加賀が自ら日本橋署にいるのは母親の遺品のメモが気になっていたからです。
明治座で芝居する浅居博美は「母親に会って」と中学の同級生・道子から頼まれます。
博美の母親は浮気はするし父親の名義で借金をするし勝手に離婚届を出したしょうもない人間でした。借金取りに毎日のように脅されていた博美は担任だった苗村先生に守られるが父親の忠雄は借金を苦に自殺してしまいました。
そんな家庭環境だった博美は当然断ります。
加賀は5年前に博美が連れて来た子供達に剣道を教えたことがありました。
橋洗い(日本橋を洗う行事)の日に博美が写っているのを見付けた加賀は博美と出会ったのは必然じゃないかと疑うと剣道大会で優勝した時の雑誌を見て博美から記者に連絡してきた事が分かります。
なぜ見ず知らずの自分に?
被害者も容疑者も知る人物
百合子の遺品には時刻表もあり仙台から女川までの道のりを調べていた事が指紋で分かります。
原子力発電所があるため原発作業員だったのではないかと疑うが「越川」「綿部」どちらも名前はありませんでした。
道子と博美の共通の知人である中学の担任・苗村先生が行方不明だと分かります。しかもルビーのペンダントの明細書を見て問い詰めたのがきっかけで離婚したことが分かるが博美の元夫から「ルビーのペンダントを大事そうに持っていた」と証言を得ていたため2人は恋人同士だったのかと疑います。
この苗村こそが「綿部」だと思うが康代の証言で違うことが分かります。
被害者も容疑者も自分が知っている人物、事件の鍵を握るのは自分なのかと加賀は思います。
博美と被害者・道子は友人関係であり、その道子を殺害した容疑者と思われる人物が綿部であり、その綿部と自分の母親は恋人関係だった。そして博美と自分は剣道教室で知り合っていた。
剣道教室を依頼してきたのが必然だと考えると、自分に会いに来たのではと考えると・・・加賀は自殺したとされる博美の父親は生きているのではないかと仮説を立てます。
結末/祈りの幕が下りる時
16年前、母親が亡くなった知らせが届いたが綿部はどうやって自分の居場所を知ったのか。
剣道大会で優勝した時の雑誌を見て出版社に連絡があったのではないかと思い訪ねると「問い合わせがあったのは演出家の浅居博美さんです」と知らされます。剣道教室の依頼があったのは5年前でありそれよりも10年も前に、しかも母親が亡くなった年に自分を調べていたのはどう考えても不自然でした。
同級生はみんなが博美の父親は飛び降りたと言っていたが地元警察で調べるとそんな事実はない事が分かります。しかし調べると石川県の崖から命を絶っていました。
加賀は話を聞きに博美を訪ねるが洗面台にあった毛根を採取しDNA鑑定すると「綿部」と99%親子だと判明しました。
博美は中学生だった時に父親と一緒に夜逃げするが石川県の旅館で原発作業員だった横山一俊に襲われ咄嗟に近くにあった箸で反撃すると横山は亡くなってしまいます。
父親は自分が死んだと偽れば娘を守ることが出来ると思い偽装自殺を企て横山となったのです。能登半島の崖から放り投げ博美が父親だと証言した事で成り立ちました。
博美はずっと守ってくれていた苗村先生と恋人関係だったが先生は仕事を辞め離婚をして東京までやってきました。
でも博美にはもう愛情がありません。しかし苗村や道子を殺したのは博美ではなく、存在がばれてしまい声を掛けられてしまった父親です。(苗村の死体は奥多摩で発見される)
カレンダーにあった月に一度のメモは博美と父親が会う日だったのです。女優として成功する娘を守るためにしたことでした。父親は荒川の小屋の主に持っていた金をすべて払い偽名で借りていた越川睦夫の部屋に私物を置いたのです。
父親は小屋で焼身自殺を図ろうとするが様子がおかしくて尾行してきた博美に止められます。
博美は「小屋にいる理由」と父親が苗村先生と道子を殺した事を聞かされます。
加賀は博美の父親が書いた手紙を受け取ると百合子が家を出てからどのように生きてきたかが書かれていました。
欝病の母親は気付くと包丁を手にしている事がありこのままでは恭一郎が被害に遭うと怖くなり家を飛び出したのです。
そのせいで父親と息子の関係が悪くなっているのではと心配して生活していたが恭一郎が剣道大会で優勝した雑誌を見て父親と同じ警察官になっている事を知り初めて心から笑顔を見せた事を知ります。
感想/祈りの幕が下りる時
原作を簡単にまとめて書きましたがそれでも涙を誘います。
日本橋にある橋が書かれたカレンダーが発見された事を知ってから加賀が捜査に加わりストーリーが加速します。
博美が5年前に剣道を教えて欲しいとお願いしなければ事件は迷宮入りしていたでしょう。
父親は娘を守るために自分が命を絶ったと偽装し、それからは偽名で皆から隠れ貧しく暮らしながらも遠くから見守っていた。自分が生きている事を苗村先生と道子に見つかり娘の未来を守るために殺人を犯してしまった。
自分はこの世にいない事になっているので月に一度だけ会う約束をして顔を見ながら携帯で話す、そうしなければならなかったのでしょう。
それにしても松嶋菜々子さんの演技力が素晴らしい。老人ホームにいる母親に憎しみを伝える場面では迫力がありました。そして父親のクビに手を掛けながら「今までありがとう」と涙ながらに感謝する場面はもう涙ものです。
当然殺人はダメですけどそれを見る側が帳消しにしてしまうほどの親子関係、父親は最後、幸せそうでしたね。