作品情報・キャスト
池田小無差別殺傷事件をモチーフにと噂されていますが実際に起きた様々な事件を参考した映画だと思われる。
平凡な一家がなぜ崩壊し次男は無差別事件を起こしてしまったのか?
監督は「その夜の侍」で監督デビューした赤堀雅秋。
葛城清(三浦友和)
父親。自分の思い通りにならない家族を力で従わせようとする。出来の悪い次男には酷い言葉を浴びせる。自分の悪いところは見えない。
葛城伸子(南果歩)
母親。夫に逆らえず黙って従い精神破壊
葛城保(新井浩文)
長男。父親の想いに答えようと必死に勉強し就職して結婚。しかしリストラされ孤立
葛城稔(若葉竜也)
次男。アルバイトも続かない。母親には口は達者でいつか一発逆転すると言い張る。
星野順子(田中麗奈)
両親を捨て稔と獄中結婚した。死刑制度反対
ネタバレあらすじ/葛城事件
無差別殺人事件
葛城清は家の壁に書かれた落書きを歌を口ずさみながら消します。
息子である次男・稔が無差別殺人事件を起こし逮捕されてから「人殺し、死ね、出ていけ、死刑だ」など落書きをされるようになったのです。
社会に大きな衝撃をあたえた凶悪事件であり死刑判決を宣告された稔は傍聴席に座る清と目が合うとニヤつきました。
この時、家に住む者は家政婦を雇う清1人であり、そこへ死刑囚の妻となった星野順子が訪ねてきます。
順子は死刑制度反対派の人間であり偽善者だと思うかも知れないが人間に絶望したくないと言います。
清は新興宗教かと馬鹿にし対面した稔も「頭悪いんじゃないか」と言います。
両親を捨ててまで獄中結婚を望む順子は、他人の痛みが分かる人と接していないだけであり私と結婚すればしっかり反省するはずだと偏った思い込みがありました。
葛城稔はどのような環境で育ったのか?
清はかなり傲慢で独裁的。自分の意に沿わないと暴力を振るう。
長男・保は清の期待に応えるために勉強に励み次男・稔は学校を辞めアルバイトも長くは続きません。
そんな兄弟を見て清は「同じ兄弟でもこうも違うのかと愕然とする」と口にします。
稔は「親から引き継いだ金物店をやってるだけで苦労して手に入れた職でもないから、あの人には何も言われたくない」と母親・伸子に愚痴ります。
そんな稔は「今は大学に行けば保証される時代じゃないし、いつか一発逆転するから」と伸子に対しては口が達者になります。
伸子は清に不満を抱えながらも口答えすると殴られるので何も言えません。それは保も稔も同じでした。
サラリーマンの保は結婚していてお腹には2人目を授かっていました。結婚記念日のお祝いに清は息子夫婦と相手の両親を行きつけの中華料理屋に連れて行きます。
常連の立場を利用し店員に味が悪いとしつこく説教をはじめる清に保は「もういいから…」と言うのが精一杯でした。
「自分の家を建てろ、俺がお前の年の頃には一国一城の主だったぞ」
帰宅すると伸子に面倒を見るよう預けていた保の子供が顔に傷を負っていました。
どうゆう事だ?!と激怒する清に伸子は転んで机の角にぶつけたと言いました。納得できない清は二階から降りてきた稔に「なにか知っているか?」と聞きます。
声優を目指す稔は喉が大事だからと紙に「俺が殴った」と書いて保に渡します。驚く保は「はやく職を見付けないとな」と返すが「そのガキ、おまえと目がそっくりで見下してやがる」と言いました。
清は「おまえが稔を甘やかすからこうなるんだ」と伸子を殴りました。
もうすぐ2人目が生まれる大事な時期に保は営業成績が悪く首になります。
辞めていたタバコを吸いはじめ居場所が公園となり面接に行っても緊張から何も話せなくなってしまいます。
妻や父親にも本当の事が言えず追い込まれた保は最後の綱である金物屋を継ごうかなと口にするが何も知らない清は「そんなのはダメだ」と言いました。
伸子は清に身体を求められた時に「最初から好きじゃなかった、大嫌い」と反抗し泣きながら「なんでここまできちゃったんだろ」と言いました。
伸子は稔を連れて家を出て古いアパートに住み始めます。
探すよう頼まれた保は清に場所を伝えるがアパートに先に行き「もうすぐ親父が来るから逃げないと」と言いました。
呑気な伸子は保に昼御飯食べて行ってと誘います。不思議と清がいないと家族うまくやっていけそうな感じだと笑顔を見せる3人は思うがそこへ清がやってきました。
狭い部屋だと文句を言いながら上がり込んできた清は稔を蹴飛ばし「お前はもうダメだな」とタオルで首を締めます。
伸子が止めに入ると清は包丁を手に取りました。驚いた伸子は家に帰るからと伝えると清は包丁を下ろし「腹減った」と座ります。
稔は保に「残念だろ?おまえ俺が死んでも良いと思ってただろ」と言いました。
家族崩壊
働いていた会社の近くで保が投身自殺します。
葬式で「仕事を失い奥さんに何もいえず自殺したらしい」と話す人達に清は「保は事故死です。余計な波風立てないでください」と言います。
レシートの裏に走り書きした遺書「申し訳ない」が見付かるが清は捨ててくださいと言いました。
精神を病む伸子は場違いな話をして笑い精神を保つが「一緒に暮らしていてどうして気付かなかったの?あなたの責任だ」と保の妻を責めます。
しかし「うそつき、どうして保が自殺したか、本当は分かっているでしょ!」と言われ何も言い返せなくなります。
稔は遺影を前に「ダサい死に方、俺は一発逆転するから」とつぶやきます。
結局、何も変わらない稔は包丁を通販で購入しリュックの中に入れて外出します。
そして地下鉄の階段を下りながら包丁を手にし目の前にいた学生を刺しました。そして狂った稔は次々と通行人を襲い無差別殺人の現行犯で捕まったのです。
結末/葛城事件
星野順子は精神崩壊し施設にいる伸子に会いに行きます。
私は彼を全力で愛し愛されたいです。私みたいな人間がそばにいれば大丈夫。私みたいな人に出会えなかっただけなんですと想いを吐きます。
清は行きつけのスナックで「俺が土下座して謝罪すれば納得するのか?俺だって被害者なんだ、国が裁くだけじゃダメなのか」と言い放ちます。
しかし清はこのままでは稔は反省せず思い通りなると気付き順子に死刑にしないでくれと頼みました。
順子も反省してもらおうと何度も会いに行くが稔は「謝罪もしないし反省もしてない。イノシシが暴走するようなもんで事故だ」と言います。
「20代だらだら過ごし30歳を手前にして発狂した奴が若者に嫉みを覚え道連れにした、それでいいだろ」
稔の死刑が執行されました。稔の最後の言葉は「炭酸が飲みたい」でした。
報告しにきた順子を清は押し倒します。
「俺の家族になってくれ、人を殺せば俺と結婚してくれるのか」と言うと「あなたはそれでも人間ですか」と順子は怒鳴り去って行きます。
庭を見ると自分が一軒家を建てた時に子供2人の成長を願って植えた木に気付きます。清はコードを手に取り木にかけて首吊り自殺を図るが重みに耐えきれず枝が折れて落ちてしまいます。
自殺する気力を失った清は部屋に戻り目の前にあった食べ掛けの蕎麦を口にしました。
感想/独自の見解
どんな理由があろうと殺人はいけません。
しかし精神的に追い込まれた伸子、保、稔の気持ちは分かる。
家で威張る人は社会のストレスを大事な家族にぶつけ精神を守っているだけで自分がいかに弱くて卑怯な人間なのか気付いていない。
強い者、成長する者は例え外で威張っても家族は守るもの。家の事を何もやらなかったとしても何も言わずどっしり構えている父親が人としては強いはず。
些細な言葉であっても否定的な「ダメ」という言葉を365日何年も言われたら恐ろしいほどのストレスになる。言葉は殴る蹴る以上の暴力ですから。
そもそもこのような人間は卑怯で自分はたった一言注意されただけで激怒するほど打たれ弱い者が多い。自分がされて怒ることを平気で、ましてや家族にぶつけ相手がどのような気持ちなのかも分からない。
自分のことが見えず問題視もしないような人だから精神的にやられるはずはないが人としては小学生から何も変わってないだろう。
伸子が精神崩壊したのは分かるし保が相談できないのも分かる。殺人は当然否定するが稔が父親の望むようなことは絶対にしたくないと思う気持ちは理解できる。
だが悲しい事に「違う何か」を見付けられず矛先が「父親を困らせてやろう」に向いてしまったのかな・・・・
同じような家庭環境で育った人なら多少私の言いたい事が分かるかもしれません。