作品情報・キャスト
「オールド・ボーイ」や「親切なクムジャさん」の鬼才パク・チャヌク監督がソン・ガンホ主演にエミール・ゾラの名作「テレーズ・ラカン」を基に映像化し第62回カンヌ国際映画祭などで世界から注目を浴びた異色ホラー作品。
孤児院で育った神父サンヒョンは重病患者の最期を看取ることしか出来ない自分を責めウイルスに対抗する新型ワクチンの検査で検体となる事を決めます。
発病後に亡くなり生き返ったサンヒョンは鮮血(以下、赤と表記)を吸わないと生きられない吸血鬼となり人妻に恋をして信仰と欲望のはざまで苦悩する。
ネタバレあらすじ/ 渇き
孤児院で育ったサンヒョン神父は患者の話を聞くため空いた時間には病院を回るのが日課となっていました。
しかし他人を思いやり30年も病気と戦っている患者が意識不明になると看取る事しかできない自分の無力さに苦悩するようになります。
どうしても人助けがしたいと思うサンヒョンはバチカンが認めていないエマニュエル研究所に行きたいと恩師に相談します。EV(エマニュエル・ウイルス)の感染症状は水疱ができ広がると呼吸器や消化器から体の中心部へ向かい筋肉層に形成されると潰瘍ができて出血します。
最期は出血多量で亡くなってしまうウイルスに対抗するワクチン作りのために検体となったサンヒョンは発病後に500人と共に亡くなってしまうが何故か生き返ります。
多くの国民が「包帯の聖者」と呼んで助けを求めに来るようになります。そんな中、息子ガンウの病気を治して欲しいとラ夫人が訪ねてきます。
心理的なものなので頼らないで欲しいと伝えるが「それでもいいから」と言われサンヒョンは病室を訪ねガンウに祈りを捧げました。
ラ夫人から「昔うちの店によく来てた神父ね」と言われサンヒョンはガンウに妹がいたはずと思い出します。しかし妹だと思っていたテジュは両親に捨てられた身で妹として拾われ子犬のように育てられたと知らされます。
しかも今はガンウの妻にさせられていました。
家を訪ねるとダムの環境課長ヨンドゥとフィリピン人の奥様イブリン、そして警備課長を紹介されます。このメンバーで麻雀をするのが決まりらしくサンヒョンも同席するがガンウの腫瘍が消滅したと知り驚きます。
バンパイア
匂いに敏感になり食欲が失せたり幻聴に苦しむようになったサンヒョンは日光を嫌うようになり夜に行動したり日光に当たらないようにして生活します。
我慢できなくなり病院にある輸血用の「赤」を飲みに行くと見付かりそうになり窓から咄嗟に飛び降りてしまいます。なぜか無傷であり怪力にもなったので不死身になったのかと疑問に思うサンヒョンは鏡を見ると水疱が消えている事に気付きます。
時間が経つとすぐに水棒が出てくるが「赤」を飲むと消える事に気付きます。
ある日、テジュが下着姿で裸足で夜道を走っていたのでサンヒョンは靴を貸してあげると麻雀で訪れた日に誘惑され体を重ねてしまいます。
後日、テジュが訪ねてくるがサンヒョンは「司祭がこんなことをしたら大罪なんです」と言います。
しかし「あなたは哀れな独身男性。私は信仰はないので地獄に落ちません」と言われ、内心恋心を抱いていたサンヒョンは再び激しく体を重ねます。
サンヒョンがバンパイアであると知りテジュは最初怖くなるが自分もバンパイアになりたいと言います。サンヒョンはテジュを抱っこしたまま空を飛ぶとテジュの体に傷がある事に気付きガンウにやられたと聞かされます。
サンヒョンはガンウを水事故に見せかけてあの世へ送ると恩師に赦しの祈りを授かりに向かいます。許しを得るが盲目を治したいから力を分け与えてくれと頼まれ「お休みください」とあの世へ送り胸から流れる「赤」を吸います。
葬儀に顔を出すが息子が亡くなったショックでラ夫人が脳梗塞で倒れ動くことができず話す事も出来なくなり看病が必要になります。
サンヒョンとテジュはガンウの姿を見るようになり「これは幻想だ」と狂ったように何度も何度も体を重ねます。
結末/渇き
ラ夫人の誕生日を祝うとテジュは「私の誕生日はしてくれなかった」と夫人を殴ります。サンヒョンは無礼だとテジュを殴りしっかり看病するよう言います。ラ夫人はなんだかんだいってもテジュを可愛がり遺産もすべて譲ると前に話していたのです。
しかし「ガンウにも殴られた事ないのに」と言われたサンヒョンは体の傷は自分でしたのだと知ります。「赤」に飢えて苦しみ、なるべく人をあの世へ送らないように我慢しながら生活していたサンヒョンは嘘を付かれていた事に激怒し首をへし折りました。
それでも愛するテジュをあの世に送りたくないため自分の「赤」を分け与えると彼女は復活するがバンパイアとなってしまいます。
サンヒョンはなるべく人を犠牲にしたくないと我慢するがテジュは「赤」が飲みたくてどんどん人をあの世へ送ってしまいます。サンヒョンは止めるよう説得するがテジュはすぐに修正される能力を気に入り抵抗します。
恒例の麻雀の日、「僕は目を読む権威だ。言葉はいらない」と自慢げに話すヨンドゥがラ夫人を見て何か訴えていると気付きます。ラ夫人は麻雀のパイと一本だけわずかに動く指で「息子は事故ではなくテジュとサンヒョンの仕業」と知らせました。
サンヒョンは罪を償わなければと俯くがテジュはニヤっと笑い警備課長を殴って他界させ逃げたトンジュの首をへし折ります。テジュの暴走を止めたいサンヒョンはトンジュの妻イブリンを追い込むが始末したように見せかけ助けます。
そして4人が失踪したらこの家が捜索されるから逃げようと言いラ夫人を連れて車を走らせます。キャンプ場のテントで体を重ねるが国民に目撃され「神父がそんな事をするのか」と責められます。
車を走らせるサンヒョンの顔には水疱が・・テジュはイブリンの「赤」を飲んでいなかったのだと気付きます。
浜辺に車を止めるサンヒョン、テジュはもうすぐ日が昇るとトランクの中に隠れます。しかしサンヒョンはトランクの蓋を捥ぎ取り海に向かって投げ飛ばしました。
諦めたテジュは初めて会ったときにサンヒョンが与えてくれた靴を履きサンヒョンに寄り添います。
「テジュとずっと一緒にいたい、地獄で会おう」
日が昇るとラ夫人が見ている目の前で二人は焼かれ抱き合いながら消えていきました。
感想
「赤」を飲むシーンや濡れ場シーンがやたら長く本来のストーリーが薄く感じた。
もうちょっとバンパイアになってしまった孤独な苦悩など分かるように表現して欲しかったのが正直なところ。
サンヒョンの苦しみはまったく伝わってこなかった。テジュを演じたキム・オクビンさんが妙に色っぽい、それだけが記憶に強く残る作品だった。
最期は信仰が勝利したという事でいいのかな。