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「告解」ネタバレあらすじと感想結末(薬丸岳)加害者に笑える日は来るのか

作品情報

私が好きな作家さんで3本の指に入る乱歩賞作家・薬丸岳の新著・贖罪の在り方を問う傑作長編。

2005年のデビュー作「天使のナイフ」でいきなり第51回江戸川乱歩賞を受賞。2016年に「Aではない君と」で第37回吉川英治文学新人賞を獲得し後にドラマ化された。2017年に短編「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞を受賞。韓国では「誓約」が大ヒットとなり、ドラマ化された「刑事・夏目信人」シリーズも代表作の1つ。私のオススメは映画化された「友罪」や映像化されると予想しているのにされない「ハードラック」など。近著では「ガーディアン」「ラストナイト」「神の子」など。

加害者に心から笑える日は来るのか!!

大学生の翔太は飲酒運転で轢き逃げ事故を起こしてしまう。

自分のこの先の未来はどうなるのか、大切な恋人や家族はどうなるのか。あまりの恐怖に罪から目をそらし続けていたが懲役4年の実刑が下される。

また被害者の夫は認知症を抱えながらもある思いを胸に翔太の出所を待ち続けていた。

 

 

ネタバレあらすじ/告解

大学生の籬翔太は友達と飲んで帰宅すると喧嘩して口を利いてなかった綾香から「話がしたいからすぐに来て、じゃないと別れる」と連絡があります。もうすぐ姉の淳子が結婚する事もあり両親は相手の実家に挨拶に行って1日いないので車を借りて向かいます。

雨の運転に慣れてきたころ、ちょっと目を離した時に激しい衝撃と共に何かを乗り上げたような感覚がありました。

母親の番号から電話を受けた法輪昌輝は交通課の沢田から「この携帯はどなたのものでしょうか」と言われます。母親・君子の携帯だと伝えると夜中に路上で倒れているところを発見された女性の所持品らしく身元を確認して欲しいと言われます。

心臓が悪い父親・二三久の事が気になったので妹の久美に連絡し実家に行くようお願いして警察署に向かいます。

遺体の損傷が激しくても母親だという事は分かり昌輝は泣き崩れます。久美は実家に行くと父親がインフルエンザで高熱を出して寝込んでおり病院で入院の手続きを済ませてから昌輝と合流するが母親が下げていた袋にはコンビニで買った氷が入っていたと知り父親に何て言えばいいのかと心が苦しくなります。

 

加害者

翔太は「あれは絶対に人ではない」と自分に言い聞かせテレビを付けるが父親がコメンテーターを務めるワイドショーが始まり「埼玉県上尾・車に2百メートル引きずられ老女が死亡」とテロップを見て凍り付きます。

・コメンテーターの父親へのバッシング

・姉の結婚破談・

・人殺しの家族となってしまう・

・呼び出した綾香が自責の念に駆られる

自分1人の問題ではないのだと言い訳し自首するのを止めるがすぐに警察が訪ねてきました。

何も答えられず動揺するのは認めたようなもの、翔太は連行されます。

両親に依頼された大谷弁護士から人を轢いた事を認めていない者に保釈が認められる事はほぼないので示談に応じてもらえるように被害者の家族に手紙を書くことを勧められます。(受け取りは拒否される)

 

道路交通法違反と危険運転致死

事件から二ヶ月後、地方裁判所で翔太の公判があり父親が有名人という事もあって傍聴券が必要でした。

・人だとは思わなかった。

・こっちは青信号だった。

・急に飲酒運転が怖くなりパーキングに止めてタクシーで帰宅した。

悪質で身勝手なものであり翔太の供述は言い訳ばかりで反省しているとは当然思えない。

検察官は懲役6年が相当だと述べるが傍聴席にいた昌輝や久美からしたら200メートル引きづられ苦しむ母親を思うとあまりの罪の軽さに納得できません。

そして判決の日、執行猶予は付かず実刑・懲役4年10ヶ月

母親は何回も面会に来てくれたが父親と姉は一度も来ませんでした。

川越少年刑務所を満期で出所

・父親は酒浸りの生活となり事件後から人が変ってしまった。

・3年前に離婚し母親は実家の熊本で生活。

・姉の淳子は結婚が破談となり母親の実家で暮らしながら農協ので働いている。

・苗字を変える申請を出して熊本に行こうと勧められる翔太は父親を尊敬していた事もあり「籬」のままで1人で生活する事を選択。

 

罪に対する償いではない

翔太はお世話になった弁護士を訪ねると謝罪に行くことを勧められるが殺されたと思っているので会う勇気が持てず被害者の遺影を視ることを考えると体が震えてきます。

服役はしたが罪に対する償いではないと言われても「考えさせてください」と俯きます。

ネットには自分の事だけでなく家族のことまで出ていると聞かされていた翔太は確認する事もできず「バレたらすぐ辞められるように」日雇いの仕事を始めます。

寂しくてどうしても誰かと話したくなり仲良かった佐山に勇気を持って電話し会うことになるが佐山は1人だと金の無心でもされると思い知り合いを同席させていました。

・事件の日、綾香は子供を授かったので相談しようと連絡していた。

・拓海を出産し管理栄養士の資格をとって病院で働いている。

・拓海を産むときに翔太には話さないと決断。

・拓海の父親には立派になってほしいという想いから会いに行き「立ち直って欲しい、友達になって支えていく」と伝えました。

 

罪の苦しみ

法輪二三久は89歳になっていて認知症の初期症状が出始めていました。昌輝は自分の家に来るよう何度も説得にかかるが「行かない」の一点張り、翔太の判決の日に「やらなければならない事があるから行かない」と言っていたが今ではその事も覚えていないようでした。

何も覚えていない二三久は探偵の小暮から渡された「籬翔太に関する報告書」を読んで鮮明に思い出します。翔太が住んでいるアパートの隣の部屋が空いていたので元教え子で40年の付き合いになる永岡新次郎に保証人になってもらいます。

 

綾香との交流がはじまり少し変化が見られる翔太だったが父親が肝臓癌で亡くなったと母親から連絡が入ります。

勇気が出なかったが綾香に背中をおされてなんとかタクシーに乗り込むことができました。

自分のせいで酒に溺れるようになり病気になって亡くなった父親に謝ることすらできなかったのでトイレに駆け込み泣き叫びます。

「もう2度と会わないと思うから言っておくけど、あんたのせいで家族は不幸になったけど、一番不幸なのはわたしたちじゃないからね」と5年振りに会う淳子から言われます。

父親は自分宛に病室のベッドで手紙を書いていたらしく叔父から受け取った翔太は帰宅してもなかなか封筒を開けられずにいました。

そんな時、老人(二三久)が訪ねてきて蛍光灯を換えて欲しいと頼まれます。お礼にとみかんを勧められ父親が好きだったことを思い出しご馳走になります。

父親の臨終に立ち会えなかった話をしている時に込み上げてくるものがあり「父親は立派だったので自分だったらよかったのに・・・」と涙が止まらなくなりました。

 

贖罪

翔太は夜勤の仕事を始め介護職員初任者研修の口座に通い始めます。綾香はたまに行って料理を作り老人にもおすそ分けとして届けます。

病院で働いている綾香は老人の認知症が進んでいると気付き心配になっていたので首からぶら下げている携帯を見て番号を交換しましょうとお願いしました。

翔太は正直に履歴書に書き「自分なりに考え、被害者の女性と近い人たちと接し役に立ちたいと思いました」と告げると5軒目で正社員での採用が決まりました。

帰り、公園でポツンと老人が座っていたので声をかけると「家を忘れた」というので一緒に連れて帰ります。

「妻と娘を知らないか、改心して善良な人間になるから戻ってくるように伝えてくれ」

返す言葉に戸惑う翔太は「困ったことが言ってください」と伝え自分の部屋に入ります。

綾香や母親は「正社員で決まったよ」と伝えてもあまり喜ばなかったが、「5年前の事を正直に伝えたうえで採用された」と伝えると心から喜んでくれました。

 

昌輝は実家に顔を出すが君子と文子の遺影と位牌がなくなっていたので驚きます。父親の携帯にGPSを仕掛けていたので追跡すると行き着いた先は古びたアパートでした。

三ヶ月前に契約していた事を知らされ部屋に入ると「翔太の調査報告書」があり、加害者と同じアパートに住んでいると知り驚きます。

「誰が文子と君子を死なせたのか忘れるな」という文字を見て復讐するつもりなのかと思うが厳格な道徳観を持っている父親がそんな事するわけないし復讐なら文子の名前は書かないはずだと考えます。

父親が警察に保護されていると知り迎えに行くが自分が誰か分からないほど認知症が進んでいたのでショックを受け強引に実家に連れて帰りました。

 

いつまで苦しまなければならないのか

翔太は綾香と一緒に食事を摂っていると昌輝が訪ねてきたので凍り付きます。

「あの老人は私の父親です。大切な親を失いたくないから今すぐ出て行ってくれ」

自分に復讐し父親が警察に逮捕されるのを防ぐためだろうか、、、翔太は謝罪の言葉すらなく「すぐに出て行く」と頭を下げました。

部屋が決まるまでネットカフェで暮らしていた翔太は仕事に向かうときに二三久と会ってしまいます。どうしてここにいるのかと戸惑うがナイフを掴んで近付いてきたので怖くて動けなくなります。

そこにGPSで追跡していた昌輝が羽交い締めにして強引に連れて行きました。

翔太は復讐への執念を感じて怖くなり警察に相談するときの証拠として先が折れていたナイフを拾い、もうここでは働けないと仕事を辞めました。

 

自分の家に父親を連れて帰った昌輝だったが携帯を置きっぱでいなくなってしまいます。「栗山綾香」から頻繁に着信が入っているのを見て翔太の家に出入りしている女性の名前ではないかと思い出し報告書で確認します。

昌輝から連絡を受けた綾香は老人が行方不明だという事を伝えた後「一緒に謝罪しに行こう」と誘うと「おれはいい」と耳を疑う返事が返ってきました。

翔太は5年間を議性にして命を狙われるほど苦しんでいるんだと言って電話を切り日雇いのバイトで出会った前科者の前園に電話して会いに行きます。

詐欺電話の練習をさせられ金を渡されるが、やはりダメだと思い金を受け取らないで止めると告げると激しく暴行を受けました。

 

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結末/告解

綾香は二三久が座り込んでいるのを発見し声をかけるとすごい熱だと気付き救急車を呼んで病院まで同行したあと昌輝に連絡を入れます。

入院してから3週間、インフルエンザは治ったが食べ物や飲み物が摂取できず衰弱していきます。

綾香は「終電がないのを分かってて翔太を呼び出したので自分にも責任がある」と昌輝に謝罪し面会をお願いします。翔太を連れてくるから面会させてほしいと綾香はお願いすると二三久も会いたいと言っている事から「自分がいるときなら」と昌輝は受け入れてくれました。

綾香は「今すぐ会いに来なければ別れる。永遠に。」とメールを送ると翔太はやってきます。

「会いたがっている。怒りや憎しみなどからくる言葉とは思えない」

それでも翔太は「俺はもういい」と断るが「あなたには拓海という子供がいる。人の親として立ち直って」と言われ衝撃を受けます。

怖い、どうすればいいのだと考え込む翔太は父親からの手紙を思い出し封を開けます。

「逃げ続けているかぎり心から笑えなくなる」

父親は自分の未来を考えてくれていたのだと知り涙がこぼれます。どんなに罵詈雑言を受けても逃げてはいけない、老人のすべてを受け止めねばと思い病院に向かいます。

昌輝に謝罪の言葉を伝えたあと病室に案内されると二三久は「彼と2人にしてくれ」と昌輝にお願いしました。

謝罪する翔太は老人のナイフを渡すと「それは銃剣だ」と言いました。

多くの人を銃剣で殺した法輪は重傷を負い帰還して裁きから逃れたが亡霊を目にしていました。苦しみから解放されたくてヒロポンに頼ったが教師となって結婚し子供を授かってもヒロポンを手放せずにいました。

ある日、子守をしているときにヒロポンをしていて文子の異変に気付けませんでした。罪悪感を偽ろうとしてヒロポンに手を出し大事な娘を失うことに・・・自分が殺してしまったんだと責め、それからヒロポンをやめ誰よりも善良に生きる事を選んだが君子も失う事に。

すべては自分の報いだと思っていた二三久はあの世へ行っても文子と君子に会えるはずないと思っており、自分と同じように罪に苦しんでいる翔太に告解したかったのです。

自分と同じように人を殺しても前園とは通じ合えなかった事を思い出す翔太は「あの事件は自分の愚かで身勝手な行動によるものであなたのせいではありません」と必死に謝罪しながら、分からないが「必ず会えるはずです」と手を強く握りました。

事件を起こした場所に綾香を呼び出し轢いた時に人だと気付いたけど怖くて逃げてしまったんだと正直に語りました。綾香は一生かけて一緒に罪を背負っていくと決意し泣き崩れる翔太を抱き締めました。

被害者遺族にも弁護士に連絡を入れてもらってから謝罪に訪れすべてを正直に話しました。

毎年、二三久と君子の命日にはお墓を訪れていたが5年後に昌輝と会います。

翔太は綾香と拓海と一緒に暮らしているが籬は自分だけが背負えばいいと思っているので籍は入れていませんでした。

事件から11年経ち、もうじゅうぶんだと思う昌輝は「栗山翔太になったらどうだ。母親は優しい性格だったからきっとそう思っている」と涙ぐみながら伝えると翔太と綾香は涙を流し「ありがとうございます」と深々と頭を下げました。

昌輝はずっと気になっており「病室でどんなやりとりがあったんだ」と聞くと翔太は「人間に戻してくれました」と答えました。

 

感想/告解

昔よりもネットの時代の方が風当たりは強いでしょうね。正直、家族や兄妹が不幸になるのはいかがなものかとは思います。

ただ、命を奪ってしまった加害者は本当にその気はなく事故だったとしても一生背負って生きていくのは当然だと思います。「いつまで」ではなく「一生」です。

薬丸岳さんの「友罪」は加害者の立場になって考えさせられたが、翔太はずっと自分が被害者かのように生活していたのでどうも感情移入は出来なかった。それに尊敬する父親の遺言と綾香がいなければ、しょうもない人間になっていたでしょう。

ただ、実際に反省して生活している人はどれくらいいるんでしょうかね・・・。

翔太は何故、「綾香に会いに行こうとして」と公判で言わなかったのでしょうか。てっきり子供を授かった事を知らされていたのかと思いましたがそうじゃなかったですしね。迷惑をかけたくなかったのだろうとは思うがそんな性格に思えないんですよね。

そして法輪二三久、ちょっとややこしい設定でしたね。「物語」として考えれば納得できますけど「贖罪」についてもっと重くえがいて欲しかったなとは思います。自分の母親が200メートルも引きずられて殺されたら「もうじゅうぶんだ」なんて一生思えないのではないかな・・・。

 

小説/BOOK
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